Rose Lavelle USWNT World Cup

「また息ができる」いかにしてローズ・ラヴェルは絶望の底から世界の頂点へと登りつめたのか…

フランス・リヨンに試合終了の笛が鳴り響いてアメリカ代表が再び世界王者に輝いた。その瞬間、選手たちはフィールドに飛び出す。

チームの中心には、決勝のオランダ戦で素晴らしいランニングからゴール下隅に見事なゴールを決め、2-0の勝利に貢献したローズ・ラヴェルの姿があった。

ワールドカップ決勝は、それまでの2年間をほぼハムストリングとの戦いに費やしたラヴェルがフラストレーションから解放され、苦しみが報われた瞬間となったのだ。

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回復までの道のりは非常に長かったため、最高の感情に包まれることが想像できるだろう。ラヴェル自身も「すべてが終わったときは感情が溢れて幸せで涙していると思っていたの」と話すが、実際は違ったようだ。

「でも、『やったわ。クールね』くらいの感じだった」

これまでほぼ誰も達成したことのないことを成し遂げても、ラヴェルが冷静でいられたのは決して驚きではない。

ラヴェルはピッチ内外で落ち着き払っている。しかし、その性質は同時に、数か月にも渡る辛いリハビリやメンタルの脆さとの格闘があった事実を覆い隠してしまう。

ハムストリングを負傷後、ラヴェルは幾度にも渡る症状のぶり返しにフラストレーションを溜めながらも、1年後となる2018年の夏にようやく代表に戻ってきた。

しかし、復帰後のラヴェルは2017年初頭のフットボールシーンに突然現れた自由気ままな選手ではなくなっていた。

ラヴェルはチームメイトの誰よりも相手を翻弄し、すぐにファンのお気に入りになるような選手だった。それが、復帰後のラヴェルはミスを恐れる内気で脆い選手に成り下がっていた。それはクリエイティビティを売りにする選手にとっては致命的な状況である。ラヴェルは「復帰したけどただただひどい状態だったわ」と告白する。

「楽しくないし、楽しむ気持ちもなかったの。私のサッカー人生でボールを扱うのがあんなに不快だったことはなかったわ」

そして、ラヴェルは「負傷前は、すべてを生まれ持ったままにプレーしていたわ。自然にプレーしていたし、ただ見たままの動きをして、感じるままにプレーしていたの」とも続ける。

「でも復帰後は、すべてを考えすぎていると感じていたの。フィジカルの回復も大変だったけど、メンタルの回復はその10倍ハードだったわ」

Rose Lavelle USWNT injury PS

自信を失ったラヴェルはスポーツ心理学者に会うようになっていた。

目的は、精神が高まりすぎず落ちすぎることもない、心の落ち着きを取り戻すことだった。その過程では症状の停滞や揺り戻しによって回復が順調に進まない可能性もあったが、ラヴェルはそのすべてを受け入れていた。

アメリカ代表、そしてワシントン・スピリットのチームメイトであり、ワシントンDCではルームメイトとしてラヴェルと一緒に生活もしているマロリー・プーは、親友の苦闘の日々を間近で目にしていた。

「ローズが今の場所にたどり着くためにどれほど辛い道をたどってきたのかを知っているわ。彼女と一緒に住んでいるし、ローズが今のような選手になるために払ったすべての努力、過程を見たの。それは私にも刺激になったし、もっとよくなりたいと自分に思わせてくれたわ」

ラヴェルも「たくさんのアップダウンがあったわ」と認める。

「でも、あのアップダウンがあったからこそそれまでよりも逆境に対する準備ができるようになったの。よりよい自分になれたと思う」

そのさらなる逆境は、想像しうる中で最も重要な舞台で訪れた。自分の理想のフォームを再び見つけ出したラヴェルは、W杯準決勝に勝ち進むまでにはベストな状態に戻っており、非常に競争の激しいアメリカの中盤にあっても当然のように先発で出場するまでになっていた。

ところが、躍動するプレーを披露していたイングランド戦の後半途中、ラヴェルは負傷で倒れ込んでしまう。

ラヴェルは「ジル(エリス監督)が『今すぐサブの選手が必要』っていう仕草をするのを見たのを覚えているわ」と思い起こす。

負傷箇所はまたもハムストリングだった。

ラヴェルは「数日後のワールドカップの決勝でプレーできるなんて試合後にはまったく思っていなかったわ」と深刻な負傷になったとすぐさま感じたようだ。

「特にハムストリングはもともと不安のある箇所だったから、本当に予測不能だったの。決勝の2日前の練習を覚えているわ。『今の時点でスプリントが怖いんだからプレーはできないだろうな』ってね」

Rose Lavelle USWNT Recovery PSGetty/Goal

ところが、そのあと説明のつかない事態が起こった。時間が早送りされたかのようにハムストリングの問題が消え去ったのだ。

「本当に何が起こったのかわからないわ。だってハムストリングがとてもいい調子になったんだから。見当もつかない。私には説明ができないの」とラヴェル自身も理解が追いつかない出来事だったという。

結局、ラヴェルは決勝のオランダ戦に90分間のフル出場を果たしたうえに特別なゴールを決め、主役の座に突如として躍り出た。

トーナメントが始まるまでは無名選手だったが、気がつけば代表の顔になっていた。

アメリカ、そして世界中で彼女たちはスポーツを越えた存在になっている。アレクサンドラ・モーガンのポジションを答えられるアメリカ人の割合は決して多くはないだろうが、彼女たちが公平な報酬でプレーしていることや、チームが持つLGBTに対するスタンス、そしてメーガン・ラピノーがドナルド・トランプ米大統領に対して発した敵意については多くの国民が知るところとなっている。

チームのベテラン選手たちは、社会問題にまつわる質問に対しては矢面に立つ。実際そのことについて、ラヴェルはメディアが多く押し寄せるワールドカップの期間中は特に感謝の念を持っていたという。

「(チームのベテラン選手たちは)ワールドカップの期間中とてもうまくやっていたし、他の選手が余計な心配をしないでも済むようにしてくれていたわ」

「プレスカンファレンスやメディアに対応するときはそういう質問をされるのをいつも恐れていたのを覚えているわ。でも質問は年長の選手たちの方により多く向けられるから、質問が私で終わったことはなかったと思う」

Rose Lavelle USWNT Pressure PSGetty/Goal

しかし、アメリカ代表はまもなく過渡期に突入することになる。

チームの主力でスポークスパーソンの役割も担ってきたモーガン、ラピノー、カーリ・ロイド、ケリー・オハラ、クリステン・プレス、ベッキー・サワーブランといった選手は30代であり、ゆくゆくは若い世代がその跡を継ぐことになる。

フランスではその役割を担うことに気が進まなかったラヴェルだが、数年後には自分が前に出るようになる可能性があることを理解している。

「(チームのベテラン選手たちの)話を聞いていると、『なんてスマートなんだろう、なんてたくさんのことを知っているんだろう』といつも思うわ。私が学ぶべきことがとてもたくさんあることを気づかせてくれるの」

「そういうシチュエーションにいたから、自分自身に責任を持つこと、自分が学びを通じてできるだけ多くのことを知る必要があると悟ったわ。それができれば、たとえ自分が同じ立場に置かれても彼女たちと同じように自分を信じられると思うの」

ラヴェルが将来的に同じ立場に置かれることは想像できる範疇のことだ。ラヴェルは24歳にして世界のベストプレーヤーの一人として自身を確立したし、その一方でより強いメンタリティでケガの呪いを乗り越えた経験を持つ。

決して簡単なことではなかったが、ラヴェルは悲惨なケガからより強くなって復帰した。それだけではなく、ワールドカップ決勝前の深刻な恐怖にも打ち勝ち、そして一度もつまずくことなく世界一のタイトルを勝ち取った。

ラヴェルは「ワールドカップの開催中はとてもストレスが多かったの。だから笛が鳴ったとき、私たちはやっと息ができて、瞬間を楽しむことができたわ」と話す。

「あのときは皆でお祝いをしながらお互いが一緒にいられる時間だったの。だから余計に、『また息ができる』って感じたのかもしれないわ」

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