2018年4月20日。
忘れられない日であり、忘れられない男―アーセン・ヴェンゲルという男の特別な日となった。
1996年の就任当初、イギリスメディアから「Arsene Who?(アーセン、誰それ?)」と言われたアルザス生まれの指揮官は、今シーズン終了後に22年という年月を過ごした愛するクラブから退任することを発表した。
3度のプレミアリーグ制覇、歴代最多となる7度のFAカップ優勝。ヴェンゲルは、イギリスサッカー界に消えることない偉業を残してアーセナルを後にする。
改革者であり、教授であり、多言語を喋れる指導者として、ティエリ・アンリやセスク・ファブレガスといた選手たちを、彼の代名詞であるアタッキングフットボールとともにノースロンドンのファンたちへ送り出してきた。そのアタッキングフットボールは多くの観客たちを魅了し、さらに2003-04シーズンには無敗優勝という偉業を成し遂げたのだ。
■貫き通した信念
クラブを愛し、クラブに愛されたヴェンゲルという1人の男がクラブを去る―アーセナルに関わる全ての人たちは、このニュースからこれから立ち直っていかなければならない。
彼が就任した1990年代後半から追いかけてきたファンも、クラブを取材していた記者であっても、ヴェンゲルという存在が場を明るくすること、そしてその人間としての魅力により特別な存在であったことは否定できないだろう。
「全ての敗戦は、決して忘れることのできない心の傷だ」ヴェンゲルは、以前このように語っている。彼の試合に賭ける強い情熱は、誰にも負けない。アーセナルの監督に就任して最初の10年間でわかったはずだ。この試合に賭ける情熱こそ、タイトルをかけて争う中でヴェンゲルに見えてきた最大の特徴であった。
ネット上での中傷や批判は、たしかにここ数年間高まっている。しかし、彼がプレミアリーグを向上させたということ、そして「アーセナル・フットボール・クラブ」そのものを変えたことは疑いようもない事実なのだ。
実際、ヴェンゲルが1995年にイングランドに来て以降、社会全体が大きく変わってきた。しかし、他の監督がイングランドに新しい革新的なメソッドや戦術的な理論を持ってきたとしても、彼は自分の信念を貫き、新しいものたちに何とか適応させようと苦労してきた。そのことが、彼の頑固なアプローチの原因となっていたのだろう。しかし、自分が信じていることを頑なに貫くことは、意見や仕事が風よりも速いスピードで移り変わっていくこの時代だからこそ賞賛されるべきことだし、批判の対象になるべきことではないのだ。
全ての栄光は、終わりを迎える時が来る。しかし、アーセナルとヴェンゲルのロマンスはこれから50年、いやもっと長い間変わらずゆるぎないものであろう。賞賛は鳴り止まず、「エミレーツ・スタジアム」のそばにある彼の銅像は、間違いなくそこにあり続ける。
Getty■恐れていた「時間」、そして「永遠の愛」
彼の将来が不確かなこと、そして上層部のプレッシャーが、22年の冒険を終わらせる原因となった。契約は1年間残っていたが、ここ数年、裏でスタッフたちを根回ししてきたオーナーによる圧力が、彼を退任という形に追い込んだのだ。
「もちろん、まだ未来に向けて戦うよ」アーセナルの監督として他の偉業を目指すかどうか聞かれたとき、彼はこう答えた。
「それが私のプランだ。しっかりとね。時間との関係は、恐ろしいものだ。ずっと時間との戦いだった。いつだって、遅れることが怖い。準備できていないことが怖い。計画したこと全てが達成できないのが怖い……時間との関係は恐ろしいんだ。過去に戻って振り返ってみることも、同じくらい怖いね」
ヴェンゲルは、ついに自分自身を振り返り、自分が22年間で成し遂げたことを振り返る機会ができた。彼は、可能な限り最も適切な言葉を語り、辞任を発表した。彼の遺産は決して色あせることはない。記憶の中でずっと生き続けるだろう。
ヴェンゲルは、その高潔さ、信念を貫き通す強さ、そして次世代の選手を育てることにプライドを持った監督して、人々に語り継がれていくだろう。
「アーセナルを愛するすべての皆さん、これからも変わらずこのクラブを愛し、価値を次世代へと継承していってください」
そして、彼はこう締めくくった
「私のアーセナルへの愛とサポートは、永遠です」
22年間という年月で、「アーセナルFC」そのものを作り上げた偉大な人物は、ついに今季限りでクラブを去る。しかし、その愛は永遠に続いていく。
文=クリス・ホイットリー/Chris Wheatley
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