アリソン・ベッカーにとって昨年は、実りの多い年だった。
2017-18シーズンのチャンピオンズリーグにて、準決勝進出というサプライズを起こしたローマの原動力となったこのブラジル代表守護神は、2018年の『Goal 50』でゴールキーパー最高位を獲得。その後、リヴァプールに加入したアリソンは欧州制覇を経験し、今ではさらに別次元の世界でプレーをしている。
プレミアリーグで21回ものクリーンシートを記録してゴールデングローブ賞に輝いた27歳の彼は、その前に開催されたコパ・アメリカでわずか1失点しか許さず、ブラジルに栄冠をもたらしている。そんなアリソンが今年の『Goal 50』でさらに大きく順位を上げ、7位にランクインしたことはもはやサプライズとはいえないだろう。
しかし、なぜこのセレソンのスターはここまで優秀なシュートストッパーになることができたのだろうか? そしてアリソンは、ここからさらに成長していくのだろうか?
『Goal』のリヴァプール特派員ニール・ジョーンズが、レッズのゴールキーパーコーチ、ジョン・アフテルベルグにアリソンに関する疑問をぶつけた。
――アリソンは2年連続で『Goal 50』最高位にランクインしたゴールキーパーになりましたが、これについて疑問を挟む余地はあると思いますか?
JA(ジョン・アフテルベルグ):あまりオープンに語りたい内容ではないけど、彼はそれに値するゴールキーパーだと思うよ。去年彼は様々なことを成し遂げたし、最も安定感のあるゴールキーパーだった。多くの人は納得がいっているんじゃないかな。
これからも彼には何度もチャンスが巡ってくるだろう。私たちはそこに注目しなければならない。彼がこの活躍を継続できるのかといった点にね。そのためには世界一のゴールキーパーになりたい、相手ゴールキーパーを上回りたい、これ以上ないベストな状態の自分でいたいとトレーニング中から望んでいなければいけない。
そしてメンタリティを作り上げなければならない。クリーンシートを5回、10回達成するとか、あるいは人間として成長するとか、すべての面でベストの状態を目指すべきだ。その向上心を失った瞬間から、衰退は始まっていくんだ。
――あなたはメルウッドでゴールキーパー・マニアとして知られ、世界中のゴールキーパーを研究しているようですね。アリソンに注目し始めたのはいつだったでしょうか?
JA:2013年にインテルナシオナルのゲームを観たときだね。自宅のオフィスのノートパソコンで観戦していたんだ。いつでも世界中のゴールキーパーに注目しているよ。マスコミで選手が話題になれば、それがU-17でもU-19でもぜひみてみたい。
アリソンについて教えてくれたのは、かつてリヴァプールでゴールキーパーとしてプレーしていた(アレシャンデル)ドニだった。アリソンの大きなポテンシャルを見抜いていて、いい選手になるだろうと言っていた。スペシャルな選手になれる器だってね。
――アリソンはすぐに頭角を現しましたか?
JA:そうだね。身長も高いし、プレーも素晴らしかった。落ち着いていてクロスの処理もうまい。判断力もあるから危険なポイントを察知してうまくセーブを重ねていたよ。悪くないスタートだったね!
リヴァプールでプレーするためには、すべての面でベストな状態が求められる。リヴァプールでプレーすることは、たとえばウェスト・ハムでプレーすることとは違うんだ。何でもできるゴールキーパーでなければならない。足下がうまく、ディフェンス背後のスペースをカバーできて、クロス処理もできて、一対一にも強く、スピードがあって反応もよくて…。
プレースピードが速いプレミアリーグでプレーするとはそういうことなんだ。頭の回転を速くして、先手で動き出し、鋭い反応をみせて素早く意思決定をしなければならない。アリソンにとっては別世界だったはずだ。しかし世界中を見渡しても、そのすべての要望に応えられるプレーヤーは多くはないんだ。
――2015年の時点で獲得を狙っていたというのは本当ですか?
JA:本当だよ。私たちは背番号1のポストにチャレンジできるゴールキーパーを探していたんだ。フィオレンティーナのネトに目をつけていたけど、彼はその夏にユヴェントス行きを選んだから別の選手が必要になった。
ブラジルではアリソンに注目し続けてきたから、そこで彼の名前が挙がった。だけど問題は、彼がEUのパスポートを持っていなくて国際プレーヤーではなかったという点だ。だから当時はどうすることもできなかったんだ。
その翌年、ローマへと移籍したことで彼は私たちにとって近い存在となった。セントルイスでのフレンドリー・マッチでは私たちと対戦して見事な活躍をしていたよ。そのとき私は監督に彼のことを話したんだ。
――アリソンはその後、2018年にリヴァプールに加入したね。彼がチームに馴染むには時間がかかりましたか?
JA:彼はすぐに溶け込んだよ。チームがエビアンでキャンプをしていたときにアリソンが到着したんだけど、彼にとってもチームにとっても、その一週間は非常に大事なものになると思っていた。
アリソンはすぐに、皆に自分の人となりを示してみせたんだ。皆もピッチの内外にかかわらず、彼のことがすぐに好きになった。ギターを鳴らしてブラジルの歌を歌っていたことを覚えているよ。それがかなりうまいんだ!
彼はうまくフィットした。誰もが彼に好意を持っていたし、彼もチームの皆とうまくやっていたよ。それはとても重要なことなんだ。アリソンはすべての選手に、自分がチームの一員であると感じてもらうことに成功していた。間違いなくロッカールームでは人気者だったしね。
――ゴールキーパーコーチからみて、彼はどんな選手ですか?
JA:何よりもまず、勤勉だね。私たちはよく話をするんだ。コーチとしては自分のアイデアについて語って選手の手助けをすることが仕事だけど、チームの一員でもあるから、選手がやりたいことについても耳を傾けなければいけない。
彼に「何がお望みだい?」って聞くようにしているよ。彼には気持ちよく、快適にプレーしてもらいたいからね。
アリソンはフットボールのファンなんだ。兄のムリエルもゴールキーパーだしね。だからもちろん、家族と過ごす時間が好きなんだ。彼はオンとオフの切り替えも上手だし、それは重要なことだよ。
――ユルゲン・クロップは、彼が難しいプレーを簡単そうにみせるところが素晴らしいと語っていましたね。
JA:それは彼の気質が関係していると思う。プレッシャーのもとでは冷静に、クリアな思考で素早く適切な判断を下さなければならない。アリにはそれができるんだ。
こうして言葉にするのは簡単だけど、ビッグマッチでは多くの視線を感じながらのプレーになる。アリのすごいところは、まったくプレーの質が変わらないんだ。たとえ相手がバルセロナでも、ハダースフィールドであってもね。
冷静だからプレーが簡単にみえるんだ。彼がパニックに陥ることはないよ。ゲームを読む力も素晴らしくて、自分がいるべきポジションが分かっている。私に言わせれば、彼の最大の強みの1つはその気質だと思うね。
――もちろん彼でもミスをすることがある。
JA:もちろんさ。昨シーズンはレスター戦とマンチェスター・ユナイテッド戦でミスをしたけど、試合には勝った。ミスが結果に影響することはなかったね。
ミスをしても冷静でいなければならない。彼にミスについて伝える必要はないよ。自分で分かっているからね。だけど彼は同時に、世界中のすべてのゴールキーパーがときにミスを犯すことを理解している。
(マヌエル)ノイアーもミスをするし、(ヤン)オブラクもミスをする。ミスをしない人はいないんだ。大事なのはミスにどう対処するかだ。前にも言ったけど、アリは素晴らしい気質の持ち主だからミスへの対処も器用にこなしているよ。
――昨シーズン素晴らしいパフォーマンスをみせた彼だけど、ビッグマッチではより一層質の高いプレーをしていたのでは?
彼の試合前の準備は同じだし、集中力も、マインドセットもゲームによって変わることはない。彼はいつでも変わらないプレーができる。それが一流のゴールキーパーに求められることなんだ。
クラブとして、アリソンのためにできることはやってきた。彼について人々に語ってきたし、試合を観てすべてのデータを収集した。今ではアリソンがどんな性格なのか知っているし、彼がチームや私たちのプレースタイル、トレーニング、そしてイギリスのフットボールにうまく順応できたと確信しているよ。
――世界最高のゴールキーパーであることを証明してみせた彼が、さらに高みを目指すには何が必要?
JA:難しい質問だね。だけど彼が本当に高いレベルでプレーを継続していることは確かだ。前にも述べたけど、そのレベルとモチベーション、そして集中力をできるだけ高く保つことだね。それが彼にとっての挑戦になるだろう。
そして昨年のようなプレーをこの先のシーズンでも続けることができたら、誰も文句が言えないと思うね。そうだろう?
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です