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【特別インタビュー】石川直宏が語るFC東京20年間のレジェンドたち

レジェンドたちが味スタに帰ってくる。

9月29日に行われる記念すべきOB戦を前に、FC東京の石川直宏クラブコミュニケーターがクラブの歴史を紡いできた名選手たちをテーマ別にピックアップ。

20周年記念のOB戦に向けたを想いを語りつつ、根底に流れる「最後まで戦う姿」というベースに触れながら、クラブとともに歩んできたスピードスターがFC東京の現在、過去、そして未来に思いを馳せる。

以下に続く

■OB選手の中でテクニック、スピード、パワーと言えば……

――9月29日、清水エスパルスとの試合のキックオフ前に、20周年記念としてFC東京初のOB戦が行われることになりました。まず参加メンバーを見た感想は?

とにかく懐かしいし、楽しみですね。ファン・サポーターがどう応援するのかな?っていう楽しみ、自分がプレーする楽しみ。ファン・サポーターの皆さんの中には、知らないOB選手がいるかもしれないですけど、「こんな選手たちがいて、今のFC東京がある」という歴史を感じてもらって、トップチームの清水戦につなげていきたいと思っています。

――今回はOB戦のメンバーを見ながら、5つのテーマを設けて、ナオさんの独断と偏見で歴代選手を紹介していただこうと思っていいます。まず最初のテーマは「テクニック」です。

わかりました。テクニックと言えば……やっぱり(馬場)憂太かな。FC東京U-18から昇格した最初の選手ですね。2002年、僕が移籍してくる前にJ1開幕戦でデビューして。当時の原(博実)監督は若くて良い選手をどんどん起用する方針がありました。憂太は真ん中でプレーしていたので、自分をうまく使ってくれるシーンが多かったですしね。パスもドリブルも、オールラウンドで非常に技術が高かった。パスの感覚、出し方が独特でしたね。見ていなくても(ボールが)出てくる感じで。よくゲームメーカーのことを「ファンタジスタ」って言いますけど、まさにその言葉が当てはまる選手だと思います。

――ほかに印象的な選手は?

昔の東京ってテクニックタイプじゃないと思うんですよ(笑)。FC東京=「頑張る」ってイメージ。でも、(小林)成光さんはうまかったな。あのスルスルっと抜いていくドリブル。成光さんのケガもあって一緒にやれる機会は少なかったんですけど、スピードより柔らかいドリブルが印象に残っています。

あと、奥原(崇)さんはコーチとして指導してもらいましたけど、一緒にプレーしたことがないので非常に楽しみです。プレースタイルがファンタジスタで、昔は後ろ髪だけを伸ばしていて、“バッジョ”って呼ばれていたんですよね(笑)。

――奥原さんは立ち姿もバッジョに似ていましたからね(笑)。クラブの初代10番、初代ファンタジスタでした。では、次のテーマは「パワー」に移りましょう。

パワーと言えば(鈴木)規郎と(近藤)祐介かな。規郎はあの太ももと振り抜く力。シュート力で言ったら、かなり上位に入りますね。二人とも左利きで、フィニッシュやドリブルも似ています。ゴリゴリ行く重戦車タイプ。

――セットプレーで壁に入りたくなかったんじゃないですか?(笑)

絶対に入りたくないですね(笑)。もちろん練習や他クラブの選手として対戦したとき壁に入ってましたし、実際に当たったことはないんですけど、めちゃめちゃ痛そうなんで。「ノリカル」ですからね。

そうだ。「パワー」と言えば、人としてのパワーを感じたのは小峯(隆幸)さん。本当にエネルギッシュで、いつも「ほら、行くぞー!」みたいな感じで常にアグレッシブ。練習でもいつも大きな声を出してましたね。

――初期のFC東京を象徴するような選手でした。

コミさんは特にそうでしたね。

――次は「スピード」で。ナオさんもスピードスターでしたが、ここは自分以外でお願いします(笑)。

自分は入れないですけどね(笑)。スピードだったら、カボレですね。一見すると速そうに見えないんですが、本当に速かった。手足が長くて、グーンって伸びていくような速さ。一緒にプレーした時は左サイドでグーっと引っ張ってくれて、そこで(攻撃の)形ができていました。カボレが左で突破を仕掛けると相手ディフェンスが集まるから、(長友)佑都(ガラタサライ)や羽生(直剛)さんにボールを落とせる。そこに(平山)相太や(赤嶺)真吾(ファジアーノ岡山)が絡んで、僕がその空いたスペースに入っていってフィニッシュを打つ形ですね。

――まさにナオさんがゴールを量産した時ですね。

そうです。2009年ですね。僕が点を取れたのはカボレのおかげでもありました。そのシーズン途中にカボレは移籍してしまって。今回のOB戦は手続きの関係で来日できるかどうか分からなかったけど、間に合いそうで良かったーと思いました。

――ほかにスピードと言えば?

あとはフジさん(藤山竜仁)ですね。ボールに寄せるスピードやターンが本当に速い。クイックネスなタイプで、スピードでぶっちぎることも難しかったし、駆け引きでクイっと抜こうと思っても対応がクイックでなかなかかわせないんです。

――そうじゃないと、あの身長(170cm)でセンターバックはできないですよね。

そうなんですよ。ずっとサイドバックで、センターバックをやり始めたのが原さんの時かな? 2003年くらいですね。30歳を越えてから変化を自分のモノにしたのはすごいと思います。

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▲2000年5月。藤山(左)と小峯

■原トーキョーを象徴する両サイド。明かされる右サイド秘話

――先ほどの小峯さんのような切り口でテクニックとスピード、一人ずつ挙げると?

テクニックは……(金沢)浄さんかな。言い表しづらいんですけれど、キープ力やパスセンスといった技術的なうまさはもちろん、とにかく駆け引きのテクニックが非常に優れていると思うんですよ。

――当時コーチだった長澤徹さん(現岡山監督)が「浄が一番サッカーを分かっている」っておっしゃってました。

タイミングのいいオーバーラップとか、ステイとかがまさにそうですよね。浄さんがジュビロ磐田にいた時、右サイドの僕が浄さんとマッチアップしていたんです。何かすごく特長があるわけでも、特別な身体能力を持ったタイプでもない。だけど、対峙していて本当にいやらしかった。だから、ウチに来てくれたときは頼もしかったですね。リーグ優勝の経験も持っていたし、戸田(光洋)さん(現岡山コーチ)との関係性もすごく良かった。

――「スピード」というテーマでパッと浮かんだのが、その戸田さん。今回は出場しないですが、実際に走るだけでなく、試合後にロッカーから出てくるスピードもとにかく速かった(笑)。

そういうスピードですか(笑)。確かに髪が乾いていないのに帰っちゃってましたからね。めっちゃ直毛だから乾くのが早いのかもしれないですけど(笑)。でも、戸田さんは実際にとにかく速かったですね。長距離、短距離、もう全部。これまで一緒にプレーしてきた中で、体力とスピードの両方を兼ね備えている選手で言えば、佑都か戸田さんのどちらかです。

あとスピードと言えば、加地(亮)さん(CAZICAFE/解説者)。僕の後ろからよくオーバーラップしてくれていました。加地さんが言うには、僕はもうボールを持った時点で全速力で走っていると。だから「原さんから『加地、追い越せー』っていつも言われてるけど、『いやいや、あんなトップスピードで走っている選手をどう追い越すんだ』」って思っていたみたいです(笑)。だから加地さんには単純なスピードだけではなくて、ボールが来る前の読みと判断の早さがありましたね。例えばミヤさん(宮沢正史コーチ)さんから右サイドにボールが来そうだなって思った瞬間から、もう僕の後ろで走り始めていて。そういう独特のスピード感が、当時の右サイドにはあったと思います。

――加地さんの「空走り」が当時、よく言われていましたね。

そうでしたね。そうやってダッシュしてきてくれたのに、僕がボールを出さずにドリブルで中へ切れ込んでいったり、シュートを打ったりするから(笑)。

――そういう時は「ごめーん」って言ったり?

「ごめーん」って言う時もあったんですけど、プレーが流れていたら、僕が謝る前に加地さんは自分のポジションに戻ってるんで(笑)。そういうスピードも速い。加地くんは一緒にやっていて本当に助かった選手です。

――左サイドの浄さんと戸田さん、右の加地さんとナオさん。この両サイドは当時のFC東京を象徴する存在でしたね。

そうですね。そこをコントロールするのがミヤさんであり、憂太がいて、ケリーがいて。バランスがすごくハッキリしていました。すごく魅力的なチームだったと思います。

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▲2002年。駆け上がる石川(左)と加地。魅力的な右サイドだった

■明かされる背番号秘話。ナオにアマラオの11番が?

――では、次のテーマに行きましょう。「単純にすごい」と思う選手をお願いします。

それは……アマラオじゃないですか? アマラオ、ケリー、ジャーンの後にルーカスが入って来ましたけど、ブラジル人選手はみんなすごいし、真面目でした。それはアマラオがずっとそういう姿勢を見せてくれていたからだと思うんです。守備も攻撃も本当に全部頑張る。点を取る力だったり、ファン・サポーターを引き寄せる力もそう。

今でも“雨の日立台”を鮮明に覚えているんですよね。アマラオのFC東京でのリーグ最終戦(2003年11月29日)、柏レイソルとのアウェイゲームで最後に2ゴールを決めたんです。アマチュア時代の1992年から在籍してきたチームでのリーグ戦ラストマッチ。本当に大事な時に点を取ってくれる選手でした。当時はアマラオが前にいて、その後ろにケリーがいてチームをコントロールしていました。

ケリーは2、3人に囲まれても取られない技術があったし、テクニックのところではあえて名前を出さなかったんですけど、一緒にやってきた中でも本当に「すごい」と思う選手の一人です。だから、今回のOB戦に来てくれるのはすごくうれしいし、ファンの皆さんにとっても注目ポイントだと思います。

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▲2003年11月29日、青赤のアマラオとしてのリーグ戦ラスト。後半から出場したキングは83分、85分にゴールを奪いFC東京が4-2で勝利を収めた

――アマラオの存在や想いは、FC東京に受け継がれている原点の一つなのかな、という気がします。

アマラオの姿を見て、僕もこうなりたいって思いましたからね。アマラオがいなくなって、自分がそういう責任や歴史をつないでいく選手になるんだという思いも生まれましたし。

アマラオが着けていた「11番」はFC東京の象徴だったから、自分は「18番」でFC東京の新しい象徴になるんだと思っていました。実はアマラオがチームを離れたタイミングで、「11番」を着ける話をいただいていたんですよ。でも、それはアマラオの番号だと思っていたし、自分の中に「これから18番をクラブにとって大事な番号にしたい」という気持ちがあって実現はしませんでした。アマラオはまさに「キング・オブ・トーキョー」でしたから。

――今でも「KING AMARAL STADIUM」の大きな横断幕がゴール裏に貼ってあります。

こんな選手、いないですよ。アマラオを知らない世代が増えていると思いますけれど、それも歴史だと思うんです。でも、またこういうふうにアマラオが来て、みんなが語り合う機会ができて、本物の「シャー」をやってもらえれば(笑)。

――オリジナルの腰の入ったパフォーマンスを(笑)。

今、いろいろなやり方がありますからね。アマラオに見せてほしいです。ゴール後に飛行機パフォーマンスを見せてもらって、試合後にゴール裏で。

――それでは最後のテーマ、かつてのFC東京を象徴するような「泥臭い選手」でお願いします。

サリさん(浅利悟)や小池(知己)さん、小峯さんみたいに、基本的に昔の選手であればあるほど、そういう印象が強いですね。“部活サッカー”って言われたこともありますしね(苦笑)。でも、そのベースの上に今がある。技術面や戦術面をどれだけ高めても、FC東京のベースは間違いなく、そういった「最後まで戦う姿」にあると思うんです。

ベテランになって体力やパフォーマンスが落ちてきても、そういった姿をグランドで見せてくれる。先輩たちのそういう姿を見て、僕も「本当に戦う姿勢がないと試合に出られないんだ」と思いました。それがFC東京に来て初めての練習で一番ビックリしたことだったんです。みんなが本当に頑張るし、ハードワークする。それがチーム全体に植え付いていたし、自分もこの姿勢をどう植え付けられるのかと思いながらずっと全力でプレーしてきました。

■「常に全力で」。先輩たちが作ってくれたベース

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▲2002年、J1第3節・横浜F・マリノス戦。中村俊輔(左)とアマラオ。左端はジャーン、右は宮沢

――そういう歴史を紡いできた選手たちが今回、味スタのピッチに再集結します。

技術面で考えたら、今の選手たちのほうが断然うまいです。だけど「常に全力を出すこと」の大切さを考えると、こういった先輩たちが間違いなくベースを作ってくれていて、そこはファン・サポーターの皆さんも分かっていると思うんです。だからスタジアムも“FC東京らしく戦う姿勢”を求める雰囲気になるんじゃないかなと。今回のOB戦では、出し尽くすことを徹底してきた選手たちがプレーします。ご覧になる皆さんには、ぜひそういった歴史を感じてもらいたいですね。

あと、個人的な希望としては、かつて一緒にプレーできなかった選手たちとやりたいですね。奥原さんもそうだし、岡元(勇人)さんとか笠木(新)さんとか。

――右サイドでしのぎを削った佐藤由紀彦さんもいますね。

ユキさんはもっと一緒に長くやりたかった選手ですね。一番と言っていいくらい。ユキさんは右サイドでクロスを上げるタイプでしたけど、僕が「FC東京ではこの人に勝たなければ試合に出られない」と思った人なので。ただ、ユキさんに勝たないと試合に出られないと思った反面、一緒に出たらもっとお互いが活かせるんじゃないかとも思っていました。でも、(ユキさんの横浜F・マリノス移籍で)一緒に出たのは本当にちょっとだけでした。だから一緒にプレーしたいと思っていたんですが、今回は相手チームで(笑)。

――なかなか一緒にプレーさせてもらえないですね(笑)。

やっぱり一緒にできないないもんなのかなと(笑)。

――ちなみに古傷のひざは大丈夫なんですか?

いや、ダメです(苦笑)。テーピングをぐるぐる巻きにしてやりますよ。結構腫れたりしていたので、最近は運動を控えて、OB戦のためにコンディションを整えるようにしています。

――それでは最後にOB戦に際しての想いをあらためてお願いします。

昔のベースがあって、長年の積み上げがあるから今があるという歴史を感じてもらいたいですね。僕は昨シーズン限りで引退してOBとしては新しいほうですが、つながりがさらなる歴史を生むことを、今の選手たちにも、ファン・サポーターの皆さんにも感じてもらいたいです。現役時代にヤマザキナビスコカップや天皇杯で優勝した時、あるいはJ2に降格してしまった時に、「これで先輩たちが喜んでくれるな」とか「悲しませてしまって申し訳ない」という想いが真っ先に来たんです。もちろん今の選手たちが歴史を作っていくんですけど、昔の歴史があって今があるということも感じてもらいたいですね。

そしてOB戦は勝負にこだわりながら、しっかりと楽しみたいですね。応援もいろいろなチャントが出たり、イジリがあったりするでしょうし(笑)。みんなで良い雰囲気を作って、その後のトップチームの試合につなげたい。皆さんにも歴史を懐かしみながら、あらためて知ってもらいながら楽しんでもらって、最高の雰囲気にしたいですね。

インタビュー・文=青山知雄

【20周年記念「FC東京OB戦」実施概要】

■日時:2018年9月29日(土)14:30~15:30 ※予定
■場所:味の素スタジアム
■総監督:原博実(2002~2005/2007監督)
■メンバーリスト

【TEAM RED】

GK
1 堀池 洋充(1999~2000/)

DF
6 小峯 隆幸(1999~2003/大原学園高サッカー部監督)
15 伊藤 哲也(2001~2003/サッカー指導者)
19 北 慎(1999~2000/FC東京U-15むさし監督)

MF
16 小池 知己(1999~2001/FC東京U-12育成担当)
14 佐藤 由紀彦(1999~2002/FC東京U-15むさしコーチ)
24 小林 成光(1999~2005/ユニオンSC総監督)
13 加賀見 健介(1999~2003/FCトレーロスU-15監督)
10 奥原 崇(1999/FC東京育成部長)
19 ケリー(2001~2004/)

FW
32 笠木 新(2000/FC東京スクールコーチ)
18 岡元 勇人(1999~2000/)
11 阿部 吉朗(2002~2006/ブロッソンツクバFCコーチ)
11 アマラオ(1999~2003/tonan前橋監督)

【TEAM BLUE】

GK
1 榎本 達也(2015~2016/FC東京スクールコーチ)

DF
3 ジャーン(2002~2006/代理人)
8 藤山 竜仁(1999~2009/FC東京U-15深川コーチ)
17 金沢 浄(2003~2009/JO FUTSAL BASE入間オーナー/JOLTIVA Jr.Youth代表・監督)
35 下田 光平(2008~2012/FC東京スクールコーチ)

MF
7 浅利 悟(1999~2009/FC東京育成部)
15 鈴木 規郎(2002~2007/Byplayers代表取締役)
14 馬場 憂太(2002~2007/ルピナスサッカースクール代表)
22 羽生 直剛(2008~2016/FC東京強化部)
32 ネマニャ ヴチチェヴィッチ(2012~2013/)
18 石川 直宏(2002 ~2017/FC東京クラブコミュニケーター)

FW
32 近藤 祐介(2003~2009/サッカー指導者)
13 平山 相太(2006~2016/仙台大学)
9 カボレ(2008~2009/)
49 ルーカス(2004~2007/2011~2013)

※現役時代の背番号を付けるため重複もある
※ (  )内は所属年/現職

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▲OB戦のユニフォーム

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