Virgil van Dijk Goal 50Goal

現在進行形のレジェンド:ファン・ダイク、世界最高の選手が語る夢物語

「ディフェンダーが栄冠を手にする時が来たのかもしれないね」

リヴァプールのディフェンスラインを世界最高に変えてしまったヴィルヒル・ファン・ダイクの目は輝いている。

彼自身でさえ、これが“異常”であり、“異常”な功績であることはわかっている。多くのセンターバックがクリスティアーノ・ロナウドより優れているわけでもなく、リオネル・メッシやサディオ・マネ、モハメド・サラー、キリアン・ムバッペよりも輝けるはずがない。ファン・ダイクのような選手は稀有な存在だ。

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28歳のオランダ人は、今年が12回目となる『Goal50』を受賞した。初のリヴァプール選手であり、プレミアリーグからは2人目、オランダ人選手としても2人目の快挙となる。

「とても誇らしいよ」大柄で優しい表情を浮かべる男は喜びを露わにする。「本当に多くの偉大な選手たちとともにこの候補に挙がったことでさえ、十分誇りに感じているんだからね」。彼がこのような個人タイトルを手にすることはもちろん初めてではない。

4月にはPFA(プロサッカー選手協会)の年間最優秀選手賞に輝き、8月にはメッシとC・ロナウドを差し置いてUEFA(欧州サッカー連盟)男子年間最優秀選手賞を手にした。もちろん、12月に発表されるバロンドールの本命とも目されている。

彼がどれだけ輝いていたかは、この受賞歴が十分に物語っている。史上最高のフットボーラー2人に勝るとも劣らないオランダ人は、世界最高と考えられるに十分な存在だ。ヨーロッパ王者となり、母国を成功に導くなど、世界中からリスペクトと称賛を集める偉大なフットボーラーなのだ。

「正直に言うけど、僕はまだこの功績の大きさを理解していないと思う。これらの称賛がちょうど僕に届いて、今はすべての状況を必死に理解しようとしているところなんだ」。そして数秒の間を置き、「でも、理解できる時が来ると思う」と笑う。自身の置かれる状況にやや戸惑いを感じつつも、素直な感情を明かしてくれた。

■偉大な男の歩み

Virgil van Dijk Goal 50Goal

ファン・ダイクは謙虚な男だ。彼はいつでも、個人賞はチームメイト、監督のおかげだと話す。もちろん自信を持ってはいるが、自分から話すのを好まない。

そのため、『Goal』は彼のキャリアを知る人物にインタビューを敢行。そして受賞を記念して特別に作られた映像を見せてみた。キャリア初期の“鈍足右サイドバック”と呼ばれたフローニンゲン時代から、セルティック、サウサンプトン、さらにリヴァプールを経て“ロールスロイス製のセンターバック”に成長した彼を支えた人物が、『クリスマスキャロル』の亡霊のように映像の中に登場し、回想しつつ賛辞の言葉を並べる。

「世界最高の選手だ。疑いようもない」。セルティック時代の恩師ニール・レノンは、満面の笑みとともに語る。ファン・ダイクを2013年にフローニンゲンからイギリスに連れてきたレノンは、最初に輝きを見せたカーライルとの一戦を振り返る。

「ドリブルで突き進み、2人を交わして『シュートを決められる』と思ったのだろう。45ヤードぐらいはあったが、ボールはバーを叩いた。この時『これこそ我々のセンターバックだ』と思ったよ」

ファン・ダイクはグラスゴーで2シーズンを過ごし、115試合に出場して2度のリーグ優勝を経験した。

「セルティック、最高の時間だったね!」冗談好きなスコット・ブラウンからのメッセージを見たファン・ダイクは、当時を思い出したようだ。両選手は(セルティック・パークのある)パークヘッドでとても親しい関係を築き、ブラウンは勝者のメンタリティの重要性を温厚なオランダ人に叩き込んだ。

「セルティックのスタイルをしっかり頭に入れる必要があった。プレーするすべての試合で勝つことを期待されていた。いつも60%ポゼッションして、常に攻撃的なスタイルでプレーしていた。今までのキャリアでこのような経験はなかったね」とファン・ダイクはスコットランドでの2年間を振り返った。

レノンは、スカウトがフローニンゲン時代のファン・ダイクのプレーを15分にまとめたフィルムを見た当時を思い出す。いまだにビッグクラブのスカウト網に掛からなかったことが信じられないようだ。

「すぐに彼のことをリオ・ファーディナンドだと思ったよ」。さらに数週間のセルティックでのプレーを見て「彼は本当に良い選手だ」と確信を得た。レノンは彼をセンターバック以外のポジションでプレーさせることはあり得ないと感じていた。

そして2015年、プレミアリーグに挑戦する時が訪れる。当初は多くの目に留まったわけではないが、元フローニンゲンのロナルド・クーマン率いるサウサンプトンが1100万ポンドで獲得を決めた。

現在はオランダ代表を指揮するクーマンは、彼のことを「キング」表現する。「プレミアリーグでプレーすることはいつも僕の夢だった」と、ファン・ダイクはサウサンプトンに渡った当時を回想した。クーマンの父をフローニンゲン時代から知る彼は、ロナルドの存在がセインツ移籍の大きな要因になったと明かしてくれた。

「(プレミアリーグに挑戦するのに)適切なタイミングだったし、当時加入するのに適したクラブだとも思った。もちろん、監督の存在がサウサンプトンに移籍するという僕の決断に大きな影響を与えた。本当に多くのことを学んだし、本当に大きなステップを踏み出せた。いつになってもサウサンプトンの時間には感謝しかない」

■夢のアンフィールドへ、そして――。

Virgil van Dijk Goal 50

セント・メリーズ時代のチームメイトであるジェイ・ロドリゲスは、ファン・ダイクのデビュー戦となったウェスト・ブロムウィッチ戦を振り返る。

現在バーンリーでプレーするストライカーは、「僕はチームメイトに『コイツはすでにトップクラスだ。どこでもプレーできるはずだ』とロッカールームで言ったのを覚えているよ。ピッチ上でポジションに関係なくプレーできるし、最高の選手になる可能性もあった。信じられないような才能を持っていたよね」と賛辞を送る。

ファン・ダイクの評判はサウスコーストから瞬く間に広がりを見せる。デビューシーズンにサウサンプトンの年間最優秀選手に輝き、2年目にはリーグカップ決勝進出に貢献。そして2017年の夏頃から、ビッグクラブの目に留まり始める。リヴァプール、アーセナル、マンチェスター・シティ、チェルシーら名だたるビッグクラブが関心を寄せていた。

一時はサウサンプトンとの関係に亀裂が入り獲得を逃したものの、最終的にリヴァプールが争奪戦を制することになる。本人もアンフィールドへの移籍を望み、レッズが当時のDF史上最高額となる7500万ポンドを支払う形で、彼の夢は実現した。

「多くのことがこの決断を下す要因になったんだ」ファン・ダイクは2018年1月の移籍について口を開いた。「僕自身の気持ちを最も大切にしていたし、リヴァプールからの興味を耳にした当初から本当にいい気分だった。他のクラブも興味を示していたけど、コーチ、選手、システム、ファン、クラブの歴史、そして将来へのプラン、多くの要因でリヴァプールが一番だったよ」

「現在、そして未来でクラブの一員であると感じられることが、僕にとってとても重要だった。ここに来てから2年近く経つけど、今のところ順調だね。この決断には満足しかないし、本当にうれしい」

「今のところ順調だね」という言葉には、すべてが集約されている。ファン・ダイクが加入して以降、リヴァプールは“良いチーム”から“偉大なチーム”に進化を遂げた。2度のチャンピオンズリーグ決勝進出、結果的には1ポイント差で栄冠には届かなかったがプレミアリーグ記録更新、そして最高のシーズンスタート――。1990年以降、これほどリーグタイトルに近づいている感覚を得たことはないだろう。

「このような成功を予想してたかって? 今でも予想できないね。これからも当たり前だと思うことはないだろう。今はただ、この状態をできる限り続けたい」

■誇り

Jamie Webster Liverpool BOSS Night 2019

ロドリゲスに続き、現在のチームメイト、トレント・アレクサンダー=アーノルド、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、さらに現指揮官のユルゲン・クロップからのメッセージを目にし、口角は自然と上がる。そして、感極まった様子でリヴァプール出身のミュージシャン『ジェイミー・ウェブスター』の映像を見つめる。6月のチャンピオンズリーグ決勝当日、マドリードのマヨール広場で5万人のリヴァプールサポーターの前でファン・ダイクの歌を演奏した場面だ。

「もう最高だね! 本当に、美しい映像だ! 僕の家族もこの中に混じっているんだ。決勝前のランチを取った後にあの映像を見た。普段はその後昼寝をするんだけど、僕は寝付けなかった。興奮が収まらなかった。気持ちの面でも準備が整ったし、すぐにでも戦って、トロフィーとともに彼らとパーティを始めたかったね! 歌にしてもらえて心の底から誇らしかったし、鳥肌が立った。すべてが最高だったんだ……」

ファン・ダイクは欧州王者に輝いた“その時”について語る。ディヴォック・オリギのシュートがネットを揺らし、ワンダ・メトロポリターノでトッテナムを下して、リヴァプールが栄冠をつかんだあの瞬間だ。

「今でも心の中に流れているよ」大柄な男は優しい笑顔を浮かべる。「試合が終わったとわかった途端、グラウンドに倒れこんだ。終了のホイッスルが鳴った時、嬉しさのあまり涙が込み上げてきた」

「僕たちが頑張り続けたことが実った瞬間だった。みんなにとって簡単なことではなかったし、一部の選手は自身の存在を示すために戦い続ける必要もあった。例えばロボ(アンドリュー・ロバートソン)。今では最高の選手だね。僕たちの成功は、苦労し続けている子供たちにも本当に大きな力を与えることができたと思う。将来に何が起こるかなんて誰にもわからないからね」

1年前の6月、ファン・ダイクやロバートソンをはじめ、多くの選手たちがキエフでのレアル・マドリー戦敗北に傷心していた。だがこの苦い経験が、翌年の成功への大きな力になったことは言うまでもない。

「マドリーでの決勝前、僕はトロフィーの横を通り過ぎたくなかったんだ。準優勝で終えるなんて絶対にイヤだった。あの時(キエフでの決勝後)の気分は味わい得る中で最悪なものだったからね……」

「トッテナム戦の前、なにがあってもトロフィーを掲げるつもりだった。この勝利は二度と忘れることのできない。キャリアの中でチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げることのできる選手は多くはいないけど、僕たちは成し遂げたんだ。語り継がれるリヴァプールの歴史になったと思うよ」

現在、アンフィールドでのマッチデーでは、サポーターによるヒーローを称えるチャントを耳にすることができる。ファン・ダイクのチャントはもちろん人気だが、ロバートソン、ワイナルドゥム、マネ、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、全員にそれぞれのチャントがあり、KOP(リヴァプールサポーターの愛称)は嬉々として高らかに歌い上げる。

「誇りだ。当然だろ!? もうこれ以上何も言えないよ」

「時々怒らせてもいるだろうけどね(笑)。僕たちの力でたくさんの人を幸せにできたことは、本当に嬉しいことなんだ。選手としてできる唯一のことは、ピッチ上で全力を出すこと。ファンが僕たちに求めているのはこれだ」

■唯一無二

Virgil van Dijk Liverpool 2019-20Getty Images

タッチライン際で激しいアクションを見せる指揮官に関してはどう思うのだろうか? リヴァプールに彼との契約を迫り、人心掌握にも長け、非凡な手腕を発揮してリヴァプールを頂点にまで導いた男に関しては何を思うのだろうか?

「間違いなく、彼とは特別な関係がある」

「僕をここに連れてきてくれたのは彼だ。これからも感謝し続ける。ファンタスティックで、明確な考えを持つ完成された指揮官だ。素晴らしいマネジメント能力を持ち合わせているし、直観も冴え、いつも正しいことを言う。スタッフ、彼、選手たちとともに存在するクラブの哲学、すべてが一つだ。フットボールクラブにとってとても重要なことで、これからも一緒にさらに多くの栄冠を勝ち取れることを願っているよ」

リヴァプールはクラブ史上最高の時を過ごす。プレミアリーグのトップに立ち、ヨーロッパの舞台でも躍動する。クロップ率いるチームは本物だ。

ファン・ダイクの栄光も終わる気配はない。未だその先を目指し続ける彼だが、ここまでの成長は近くから見守ってきた人からしてみれば決してサプライズではない。

「今現在、彼より優れた選手は存在しない」スコット・ブラウンは語る。「こうなることが彼の運命だった」ジェイ・ロドリゲスは語る。ファン・ダイクのデビューをフローニンゲンで見守ったピーター・ハウストラには「彼の成功はオランダフットボール史に刻まれた」とまで言わしめた。セルティック時代の恩師レノンは「史上最高のフットボーラーにまで登り詰める」と断言する。

これ以上の称賛の言葉など存在しない。それも、センターバックの選手に対して。

フィルジル・ファン・ダイク。唯一無二の選手であることの証左である。

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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

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