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【NXGN Jリーグ】京都サンガF.C.の若きキーマン川﨑颯太。「日韓ワールドカップのボール」から始まったサッカーへの情熱/インタビュー

 4月中に戦った明治安田生命J1リーグの5試合で3勝1分け1敗と好調ぶりを見せつけた京都サンガF.C.の中で、MF川崎颯太はそのうちの4試合に出場してその間にチームは無敗。アンカーとして攻守の生命線を担い、ピッチ中央で大きな輝きを放っていた。

 『GOAL』では「NXGN Jリーグ」の4月度月間最優秀若手選手に川崎を選出し、DAZNとサッカーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」の枠組みでインタビューを実施した。(インタビュー日:5月12日 聞き手:上村迪助/GOAL編集部)

■「チーム全員が特徴を理解してくれている」

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――川崎選手が出場した4月中の4試合で京都は3勝1分け無敗。その中で中心的な役割を果たしていたということで選出させていただきましたが、率直な気持ちはいかがでしょうか。

以下に続く

 僕個人が選ばれたというよりは、やはりチーム全員で戦った結果の3勝1分だと思います。その中で僕は長い時間出場させてもらい、それでも僕一人でできたプレーは多くなかったです。周りが助けてくれたり、周りとともに戦えたりしたからこそのパフォーマンスだと思います。まずは率直には嬉しいですけど、周りに感謝したいなと思っています。

――サガン鳥栖との第8節(4月10日)では福岡慎平選手の蹴ったCKから頭でチームの2点目を決め、3-1の勝利の決勝点となりました。ご自身のJ1初得点でもありますが、あのシーンを振り返ってください。

 1点目は相手の起点を潰して上手くショートカウンターで点を決めることができて、かなり自分たちの良い流れだと思っていました。ここで引くのではなく、もう1点取りたいという気持ちは全員の中で共有していたと思います。京都は本当にセットプレーも大事にしていて、石川(隆司)コーチや曹(貴裁)監督が毎試合相手のウィークポイントを狙いながらセットプレーを考えてくれています。僕がターゲットになっているあのセットプレーで上手く(福岡)慎平君のボールに合わせられたのはチームとしての狙いもそうですし、チームの流れをより良くする良いゴールだったのではないかなと思っています。

――昨年から見ている方はもちろんご存じかと思いますが、J1リーグのファンの方に向けて改めてご自身の特徴をお教えください。

 予測してから相手の懐に入るようにがっつき、激しくボールを取りに行ってから、攻撃のスイッチを入れるようなプレーが得意だと思っています。球際で激しく奪うだけじゃなく、その後の攻撃によりスムーズに繋げたりとか、チームの流れが悪い時こそ走ってチームのために体を張ったりするプレーが自分の中での特長かなと思っています。

――カテゴリが上がって十分に通用している部分、反対に課題に感じる部分はありますか?

 J2では十分に自分の特長は出せていたと思うので、それをJ1で出すだけだなと思っていて、ほとんどの試合で出せているかなと思っています。ただ、相手もどんどんレベルが高くなっていく中で、どうしても自分たちのフォーメーションの配置の隙を狙ってくるチームがあり、そういう相手にただただ激しくいくだけでは足りないと思っています。やはり相手の立ち位置を考えて味方の位置をもっと指示するなど、一人で戦うのではなく自分が行ってチャレンジした後のカバーで奪いきるとか、もっとチームとして自分が中心になって選手を動かせるようにならないといけないなと思いました。

――J1のスタッツではタックル数が1試合平均3.7回で全体4位、成功率も72.7%(※5月12日時点)です。今語っていただいた部分にも被ると思いますが、どういったことを意識していますか?

 自分の中では高校生、中学生の時から相手の予想しないタイミングで身体をぶつけに行ったり、相手の死角から入ってトラップした後がっついたり、本当によく相手のことを観察して自分のことを見えてないなと思ったら行ったりしていました。そういうプレーは本当に得意だったので、それがJ1でも通用しているのは嬉しいことだと思います。

――川崎選手のプレーはアンカーでも矢印が前に向いているかと思います。奪ってすぐに裏に一本狙ったり、ゴール前まで走り込んだりするプレーはリスクも負っているかと思いますが、葛藤や怖さはありますか?

 自分の中では結構怖いなと思う場面もありますが、チーム全員が僕のそういう特長を理解してくれています。僕が攻撃参加した時は、例えば福岡選手であったり武田(将平)選手だったりがバランスを取ってくれています。自分一人で攻めている感じだと怖いですけど、周りがカバーしてくれているからという気持ちだと行きやすくなります。僕のエネルギーを削がないように周りがサポートしてくれることもあるので、それは本当にありがたいなと思います。

――曹監督からの指導について、手腕や実感するご自身の成長についてお聞かせください。

 観察眼と言うのか、周りのことをよく見ています。ふとミスした後の(選手の)顔であったり、ピッチに入ってくる顔だったりも(曹監督は)すごく覚えていて。自分たちがどのようなモヤモヤを抱えているかとか、心の奥底でちょっとだけでも感じているようなことをグサって言われるようなことが本当に多いです。自分の中でうやむやにしていたことを曹監督に言われてハっとして、考えるきっかけを与えてくれるなど、素晴らしい監督だなと思っています。オフザピッチだったらサッカー以外の私生活の話もしますし、自分たちがオフザピッチでもオンザピッチでも充実してるかみたいなことを見られながら、よく観察されてるんだろうなと感じるところはあります。

■サッカーの“熱さ”を知った小学生年代

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――クラブの話題から一度離れ、川崎選手の原点についてお聞きしたいと思います。まず、サッカーを始めたきっかけなどありましたらお聞かせください。

 結構お父さんが元々サッカーをしたかったけど自分ができなかった、という経験から僕にサッカーをさせたかったというところがありました。ちょうど日韓ワールドカップ(2002年)の時に僕が1歳ぐらい(※当時0歳10~11カ月)で、(周囲に後から聞かされたところでは)その時に日韓ワールドカップのボールをプレゼントしてもらったのが原点かな、と思っています。それから幼馴染の一個上の友達が入っているサッカースクールに自分も入りました。

――当初は出身地山梨県の名門フォルトゥナサッカークラブに入り、U-12年代からヴァンフォーレ甲府にも所属していたと記録されています。

 フォルトゥナも、ヴァンフォーレ甲府のスクールも、最初は色々と掛け持っていた時期だったと思います。(サッカーを始めたのは)本当に幼稚園とかの時なので覚えてはないですが、小学生ぐらいからフォルトゥナに入っていたと思います。

――それからU-12年代で甲府に専念することになったと。その決断を下した理由は何だったのでしょうか?

 僕がヴァンフォーレ甲府のジュニアの二期生なんですが、一個上の一期生の試合を見た時に山梨中からうまい選手が集まっていました。こういうところでサッカーをしたら伸びるんだろうなと自然と思い、セレクションを受けました。

――ユースから京都に移っておりますが、その経緯などをお教えください。

 甲府のユースがプリンスリーグから県リーグに落ちてしまって。このままプロとして成長できるのかなと考えた時に、(甲府の)ユースに上がるというより他の選択肢を探し始めました。(京都に移ってからは)福岡選手など、間違いなくレベルが高い選手と毎日サッカーをする中で、高校生って結構フィジカルの差もありますし、最初はなかなかプレミアリーグとか試合に出られませんでした。ですが、毎日毎日その先輩相手にガツガツ行く中でどんどん成長させてもらいました。

――育成年代において自身のベースになった指導者の存在はありますか?

 一番尊敬している監督はU-12甲府の時の西川陽介監督(現:甲府アカデミーダイレクター兼強化部長)です。最もサッカーに熱いなと思ったのがあの人でした。甲府のジュニアは年に何百試合、700とか600試合くらいやるチームで。毎週のように朝5時に甲府を出て、朝に埼玉に着いて、夜まで試合をやって、夜中帰ってくるようなことをしていました。バスの移動も監督やコーチがやりますし、ずっと生活を僕たちに捧げてくれていた監督です。その監督がいたからこそ自分たちは成長できたと思います。レベルが高い相手とずっと試合ができたことで、4年生の時に敵わなかった相手に6年生になって勝てるようになるなど、本当に達成感や努力する喜び、幸せを感じることを教えてもらった監督だと思っています。

――かなりタフな育成年代だったと思いますが、プロでも世代別日本代表など忙しくされています。3月にはU-21日本代表としてドバイカップU-23に参加されていました。

 正直、海外の暑さやピッチ状況はやはり日本の、特にJ1とは比較にならないほど違いました。それを言い訳にせずにいつも通りのプレーをしている選手もいれば、J1の時の方が良いプレーするなという選手もいました。そのタフさや日本代表を背負う、日本代表の重みをプレッシャーではなく力に変えられるかがものすごく大事だと思っています。自分のプレーでいっぱいいっぱいになってしまう時間もあり、まだピッチ状況に慣れていなくてイージーなミスが多く、慣れていないから仕方ないと思う反面、やはり代表は即席チームなので、もっともっと自分の特長を出せるように厳しい状況でもやっていけるタフさを身に付けたいと思いました。

――代表とクラブの両立や環境への適応について。コロナ禍で海外での経験がなかなか積みづらい世代でしたが、中には経験してきた選手たちもいます。参考になる選手はいましたか?

 やはりその田中聡選手や(藤田)譲瑠チマ選手。譲瑠チマ選手は早生まれで一個下で、U-17ワールドカップにも出ていたと思いますし、半田陸選手も出ていましたか。そういう選手はやはり周りとのコミュニケーションの取り方も上手いし、自分のチームではなくても自分のプレーを出すという面ではすごく自然とやれているなと思いました。慣れかもしれないですが、そういう選手とやっていく中で自分もこうなりたいと感じることはありました。

――同じポジションの選手の名前が挙がりましたが、同年代でやはり意識していますか?

 譲瑠チマ選手や田中選手は去年もJ1でずっと出ていますし、もちろんライバルとして見てしまいます。そして(山本)理仁選手は本当に僕が小学生の時から間違いなく上手いとずっと思っていて、J2で少し苦しんでいた時期もあったかもしれないですが、ドバイカップの時は『僕が知ってる理仁だ』というプレーも多かったです。その選手とスタメンを取るとか、メンバーに入るとかの戦いができることは本当に喜びでもあり、大変だと思うけど頑張らなきゃという気持ちです。

――同世代の選手同士の関係といいますと、クラブの方ではやはり福岡選手などとよく話しますか?

 そうですね。武田将平選手や福岡慎平選手とは本当によく喋ります。二人とも僕よりもサッカーIQが高いと思っていて、あのプレミアリーグの試合がとか、何でこっちのチームが勝ったのかとか、何でこっちのチームは負けたのか、そんな話をする中でやはり自分がまだまだ試合を読み切れてないなと感じることがいつもあります。そういうところを合わせていったら試合中でも自然と合うようになってくると思うので、もっとサッカーの試合を意識的に見て、学ばないといけないなということはいつもその二人から感じます。

■目標は世界で「愛される」こと

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――海外サッカーも観戦されるとのことで、特定の応援しているチームなどはありますか?

 ありませんが、やはり曹監督はリヴァプールの映像をよく見せますし、リヴァプールは見る回数は間違いなく多いなと思います。リヴァプールは基本的に自分たちと立ち位置が似ていて、曹監督がやりたいサッカーなので、全体を見ることも多いですし、もちろん自分のポジションの選手も見ます。

――リヴァプールはチームとして今参考にしているとのことですが、育成年代でお手本にしていた選手や憧れていた選手はいましたか?

 自分の中でこの選手というのがいなくて、強いて挙げるとしたら(エンゴロ・)カンテ選手かなと思っています。あの身長でそれでも胸板が厚くて、フィジカル負けもせず、走り負けもせず、かっさらって攻撃に繋げるという面では自分が目指している中での世界最高レベルだと思います。だからと言ってチェルシーの試合を多く見たわけでもなく、(マルコ・)ヴェッラッティ選手とかも近いところは感じたので結構好きだった時代もあります。ポール・ポグバ選手のダイナミックな攻撃参加を、自分もしたいなと思って見てる時期もありました。色々な選手を好きでよく見てるという感じだと思います。

――海外サッカーと言えば、現地時間5月28日にはチャンピオンズリーグ(CL)決勝のリヴァプールvsレアル・マドリーが予定されていますが、やはり楽しみにしていますか?

 もちろんそうです。準決勝もレアル(マドリー)の方から見て、マンC(マンチェスター・シティ)が素晴らしいサッカーをしてたと思いますが、それを飲み込むくらいのメンタリティや勝負強さはレアルは本当に毎年のようにありますし、そういうスピリットがあるんだなと思っています。学べるものかどうか分からないですが、そういう勝負強さはほしいなってずっと思っています。

――改めてその決勝について、注目したいポイントなどありますか?

 僕的にはやはりリヴァプールがリヴァプールらしいサッカーをし、それでもレアルが勝負強さを見せるような、お互いの特長を出し合った試合が見たいと思っています。決勝はどうしても硬くて、どっちかというと準決勝の方が面白かったのでは? というイメージがあるので、硬さはあるかもしれないですが、エキサイティングな両方が力を出し切ったような試合が見たいと思っています。

――CL決勝もですが、サッカーの世界には様々な大会や個人賞があります。ご自身が描く、今後のキャリアプランをお教えください。

 まずはパリ五輪に出たいというのが一番。パリ五輪に出てからなのか、出る前なのか分からないですが、海外でプレーすることは小さい時からの目標なので、そこは目指していきたいと思っています。どのチームに入りたいとかは無いですが、そのチームで愛されるような選手になりたいと思っています。活躍するだけでは愛されないと思いますし、僕がチームを愛することであっちからも愛されると思います。ただ海外で活躍するというだけではなく、海外のサポーターに認められたりとか、チームに認められたりとか、チームメイトに認められたりとか。ただただ海外でサッカーするだけだと面白くないかな、と思っています。

――もう一度クラブの話題に戻りまして、改めてチーム、個人としての今シーズンの目標をお教えください。

 曹監督が去年から川崎(フロンターレ)に勝つサッカーがしたい、するぞって話をされていたので。川崎以外にも(横浜F・)マリノス、鹿島(アントラーズ)とか(サンフレッチェ)広島もそうですが、やはり楽しみな相手がいるので、そういう相手に怖気づくことなく京都サンガのスタイルを全面に見せるサッカーをし、勝ちに行きたいなという気持ちでいっぱいです。曹監督がシーズンの最初から全試合勝ちに行くぞという話をずっとされていて、自分たちもまったくその通りだと思っています。結果的に勝ったか勝っていないかはどうでもいいと思っていて、自分たちのスタイルを貫いて勝ちに行きたいなと思っています。相手に合わせてジリジリ引いて、1点だけ取って勝ったからハッピーかと言われたらそうではないと思いますし、ただただ残留を目指すサッカーではなく、日本サッカーを変えるつもりでいくぞということは曹監督が言っているので、自分たちもその気持ちでやりたいと思っています。

――最後に、ファン・サポーターの方へのメッセージをお願いします。

 本当にいつも応援ありがとうございます。サンガスタジアム by KYOCERAでは本当に皆さんの熱気のおかげで、自分たちは苦しい時間帯でも走れるようになりますし、戦えるようになっているので、本当にいつも力を頂いています。これからも様々な相手と戦う中で、やはり皆さんの力は絶対に必要になってくるので、これからも応援よろしくお願いします。僕たちも期待に沿えるように頑張ります。

――ありがとうございました。

ありがとうございました。

■「NXGN Jリーグ 2022」月間表彰
「NXGN(ネクストジェネレーション) Jリーグ 2022」月間表彰では、2022シーズンの明治安田生命Jリーグ(J1、J2、J3)のクラブに所属しており、かつ2001年1月1日以降に生まれた選手を対象とし、各月ごとに最も輝いた若手を選出。月間最優秀若手選手として表彰する。

■プロフィール
MF 24 川崎 颯太 Sota KAWASAKI

2001年7月30日生まれ。172cm/68kg。山梨県出身。利き足:右。フォルトゥナSC-甲府U12-甲府U15-京都U18を経て2020年に京都のトップチームに昇格。J1リーグ通算11試合1得点、J2リーグ通算57試合3得点。(5月15日時点)

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