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【NXGN Jリーグ】清水エスパルスMF鈴木唯人が明かす兄を追った少年時代、市立船橋での飛躍。プロ3年目の現在は「普通の選手でいたくない」/インタビュー

 鈴木唯人は2022シーズン、明治安田生命J1リーグ開幕節の北海道コンサドーレ札幌戦で鮮烈な先制点を決めると続く第2節、ジュビロ磐田との“静岡ダービー”でもネットを揺らして2戦連発。『GOAL』では「NXGN Jリーグ 2022」の2・3月度月間最優秀若手選手に清水エスパルスの攻撃をけん引する20歳MFを選出し、DAZNとサッカーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」の枠組みでインタビューを実施した。(インタビュー日:4月15日 聞き手:上村迪助/GOAL編集部)

■チーム内で「攻撃を担っているのは自分」

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――今シーズンは明治安田生命J1リーグ開幕から2戦連発と、個人としては好調の滑り出しとなりましたが、ここまでの調子はいかがですか?

 スタートは良く切れたと思っていますが、チームとしては第2節で勝利はできましたけどなかなか勝てない状況が今も続いています。自分としても(開幕からの)2試合が終わった時点で得点できていましたが、その後は今のところ取れていません。まだまだやらないといけないことは多いですし、自分ももっともっとより結果にこだわらないといけないなと思っています。

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――チームのことについてもお聞かせいただきたいのですが、まずは2-1で勝利した第2節ジュビロ磐田戦(2月26日)の得点についてうかがわせてください。カウンターからドリブルで持ち運んでそのまま決め切りましたが、シュート時のボールの置き所も絶妙に見えました。

 相手のミスもあり、フリーな状況でハーフウェイラインから独走する形にはなりましたが、しっかり状況を見て落ち着いて決められたことが一番良かったと思います。(シュート時は)置き所というより相手DFの位置とキーパーの位置が分かっていたので、確実に流し込めばいけるなと。キーパーと距離もめちゃくちゃ近いわけではなかったので、上手くコースに流し込もうと思いました。

――1-1で引き分けた開幕節の北海道コンサドーレ札幌戦(2月19日)の得点も思わず声が出てしまうような素晴らしい一撃でした。巧みな抜け出しから、トラップ、豪快なシュートを見せたあの場面ではどのようなイメージを持っていましたか?

 去年も原(輝綺)選手からああいうボールが多かったので、あのシーンでもしっかりと足元ではなくて、裏に抜け出すイメージで受けられたことがまず良かったです。あとはトラップもイメージ通りに置けたので、角度も無かったですが、一回中を見て人が来ていないかを確認して誰もいなかったので上手く上に流し込もうと思ってシュートを打ちました。

――相手GKの虚を突くような、タイミングを外すシュートが印象的でした。そういったプレーは感覚的なものなのか、それとも分析した結果もたらされているものなのでしょうか?

去年から散々シュートを外してきているので。シンプルに打っても入らないというのはコーチなどにも言われていました。相手のキーパーの意表を突く、何か一個加えてやろうっていうのは最近考えていることです。あとは落ち着いてゴール前に入れている時はああいう感じでできるのかな、とは思っています。

――1年目、2年目で課題に挙げていた得点力の開花を強く予感させる序盤戦だったのではないでしょうか。

 シュート練習はしてきましたし、シュート練習だけでなく色々な面で自信を持って開幕から入れたので、思い切ってプレーができています。逆にやらないといけないという責任もあるので、それが上手く出ているのかなとは思います。

――責任感という部分では、クラブの現状について抱えている思いもあるかと思います。ここからの巻き返しに向けて、意識していることをお教えください。

 やっぱり何らかの形で得点を取らないといけませんし、自分は前の選手なので、それに絡まないといけないと思っています。前の選手がしっかりと追加点が取れていれば勝ち切れた試合など、そういう試合は去年から何回もありました。攻撃を担っているのは自分だと思っているので、そういったところでもう少し自分に良いプレッシャーをかけながら、責任を持ちながら、しっかりとこのチームを勝たせるんだという思いを持ちながらやっていきたいと思っています。

――昨年から背番号23を背負っていますが、清水では岡崎慎司選手や北川航也選手が背負ってきた象徴的な番号だと思います。意識していることはありますか?

 23番といえばエスパルスの象徴的な番号ということも自分の中では分かっていますが、それを考え過ぎるタイプではないので、自分なりの23番になれればいいと思います。特別それについて何かを思ってやっているわけではないですが、少なからず着けさせていただいているからには、しっかりとした結果とプレーを見せられれば問題ないと思います。

■公式戦に1度も出られなかった高校1年生時代

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――鈴木選手のサッカーの原点についてお聞かせください。まず、サッカーを始められたきっかけは何でしたか?

 多分お兄ちゃんだと思います。2歳上のお兄ちゃんがやっていて、小さい頃からその姿を見て自分も一緒にサッカーをやったのが始めたきっかけだと思います。(意識して始めようと)考えることもなく、気付いた時にはサッカーしかやっていなかったです。

――横浜F・マリノスプライマリー追浜を経て、中学生時代は公立の葉山中学校でプレーされていたとのことですが、その辺りの経緯をお教えください。

 (中学生に上がるタイミングで)マリノスのジュニアユースに上がれないというのは分かりましたし、お兄ちゃんと普段ずっとサッカーをやっていて、お兄ちゃんには敵わなかったので。それで小学校6年生から中学生になると身体つきも変わってきて、一気にレベルが(上がる)。お兄ちゃんが凄かったっていうのが一つですけど、全然成長できるなと。中学校にお兄ちゃんが行っていて良い指導者もいると分かっていたので、特別そこで他のクラブチームに行くということは何一つ考えずに部活に決めました。

――プロ入りを決意したタイミングはありますか?

 市立船橋高校入って、正直いまの自分がプロになれるという考えはありませんでした。目指してはいましたが、実力的に入った当初の高校1年生時は公式戦にも一度も出たことが無かったので、そうは思わなかったです。高校2年生になってから試合にずっと出始めて、スカウトなどは時々試合に見に来るチームにはいられたので、そういう中でそういう方と話したりして狙える位置にいると。もう一回り二回り成長できればチャンスはあるな、と感じたのが高校2年生でした。

――伸びるきっかけとなった言葉や指導などありましたらお聞かせください。

 間違いなく指導者だと思います。いまジェフユナイテッド千葉のユースで監督をやっているんですが、(当時市立船橋高で指導していた)朝岡(隆蔵)監督に1年生の時はとことん叱られながら、2年生になって自分のプレーが思うようにいき始めてから、またそういう時にも色々なアドバイスだったり指導だったりを頂きました。色々な経験をさせてもらい、2年生の時にちょっと、全然やれるなと思いました。

――そこからプロ入りを果たし、Jリーグでも注目を集める選手となっています。同世代で意識する選手などはいますか?

 身近にいる、エスパルスで一緒にやっている松岡大起選手は、最近はずっと怪我してましたけど復帰しました。ライバルでもありますが、チームメイトで一緒に頑張ろうという仲間でもあるので、これからが楽しみだなと感じています。特別普段の生活で一緒にいるということはあまりありませんが、サッカーのことはしっかりと真剣に話します。そこだけは話せる、それだけで自分は良い関係なのかなと思っています。

――将来の話題に移らせていただきます。今後、自身のキャリアプランをどのように描いていますか?

 ワールドカップに出たいとかは多分みんなやっていれば思っていると思いますし、自分もこの間初めて、国内組だけでしたが追加招集でA代表の活動に行きました。少なからず今までとは違って(A代表が)身近に感じられたので、しっかりと地に足着けてやっていけば、必ず届くところだということは分かりました。自分は日頃、一日一日やるしかないって言っていますが、(目標は)常に上のステージに。最近はみんな海外に行っていますが、少なからず人としての幅も広がると思いますし、向こうに行って成長できることは間違いないと思っています。そういうところに行けるようになるのも、やっぱり今のチームでの活躍が必要になってくると思います。急激に、今すぐに、チャンピオンズリーグに出られるチームに行けるわけではないと思いますし、着々と日々頑張りながら、一個ずつ一個ずつステップアップできたらいいな、と今は考えています。

――それを踏まえて、今年一年をどのようなシーズンにしたいですか?

 飛び抜けるだけかな、と思っています。普通の選手ではいたくないですし、やっぱりあいつ違うな、と思わせるような。それは結果で表現しないと少なからずダメだということも分かっていますし、本当に飛び抜けないといけないなと思います。

――最後に、ファン・サポーターの方々へのメッセージをお願いします。

 毎試合毎試合、チームの勝利にしっかりと貢献し、今年は個人としてもチームとしてもしっかりと結果を残して皆さんと喜びを分かち合えるように一生懸命戦っていきたいと思います。応援よろしくお願いします。

――ありがとうございました。

 ありがとうございました。

■「NXGN Jリーグ 2022」月間表彰
「NXGN(ネクストジェネレーション) Jリーグ 2022」月間表彰では、2022シーズンの明治安田生命Jリーグ(J1、J2、J3)のクラブに所属しており、かつ2001年1月1日以降に生まれた選手を対象とし、各月ごとに最も輝いた若手を選出。月間最優秀若手選手として表彰する。

■プロフィール
MF 23 鈴木 唯人 Yuito SUZUKI
2001年10月25日生まれ。175cm/70kg。神奈川県出身。利き足:右。横浜F・マリノスプライマリー追浜-葉山中-市立船橋高を経て2020年に清水エスパルスに新加入。J1リーグ通算72試合4得点、ルヴァン杯通算7試合1得点。(4月18日時点)

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