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【徹底分析】「日本代表が取るべき選択は1つしかない」…『as』副編集長スペイン戦勝利へのプランを提言

カタール・ワールドカップでグループEを戦う日本代表。初戦ではドイツ代表相手に2-1の逆転勝利を達成し、世界中に衝撃を与えた。しかし続くコスタリカ代表戦では最後まで守備陣を崩せず、一瞬の隙を突かれて0-1とまさかの敗戦。厳しい状況に追い込まれている。

そして迎える運命の第3戦の相手は、スペイン代表。初戦でコスタリカを7-0と粉砕するなど、今大会でも最も完成度の高いチームとして評価の高いヨーロッパの強豪国だ。これまでの2試合で1勝1分け、引き分けでも突破の可能性は十分にあるが、ルイス・エンリケ監督は「私たちは勝ちに行く」と宣言。首位通過に向けて手を抜く気は一切ない。

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そんな“ラ・ロハ”との大一番、日本代表はどう戦うべきなのだろうか? スペインの何を警戒し、どこを突いて勝利を狙うべきなのだろうか? これまで日本代表を長く分析し続けてきたスペイン大手紙『as』の副編集長を務めるハビ・シジェスが、勝利に向けたプランを提言する。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長

翻訳=江間慎一郎

■「偉業」達成のために

一試合一試合を一区切りにするとして、コスタリカ戦後の日本代表には痛ましさを覚えてしまう。あの試合の出来事は誰も想像していなかったし、あまりに残酷な結果にも映った。ただ、コスタリカが勝利にふさわしくなかったとしても、日本は敗北にふさわしかったと言える。前半をああしてゴミ箱に捨ててしまったことが徒となり、結果として彼らがベスト16入りを果たすためには、コスタリカではなくスペインに勝たなければいけなくなってしまった(コスタリカ対ドイツの結果はあてにしない方がいい)。日本がスペインに勝つという偉業を達成するためには、あらゆる面において学術的、情熱的なパフォーマンスが必要となるだろう。

ドイツ戦では森保一とハンジ・フリックの交代策が命運を分ける形で、不可能と思える逆転劇を成し遂げた日本。しかし今回は、状況も対戦相手も試合展開の予測も異なる。日本がコスタリカから受けた一撃は精神的にも厳しく、もう一撃もらえばリングに崩れ落ちるかもしれない。かてて加えて、その一撃を狙うスペインは戦術的規律がチーム全体にしっかりと浸透しており、そこから繰り出される攻撃はまさに流麗そのもの。ドイツよりも完成されているばかりか、今大会最も優れたパフォーマンスを見せているチームである。

■やるべき3つのこと

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森保率いるチームが最初に取るべき選択は1つしかない。それは“スペインがここまでに見せてきた創造的な攻撃をいかにして防ぐのか”、ということだ。サプライズを望まなくともサプライズ与えてくるルイス・エンリケが、どのようなスタメンを起用するかはまだ分からない。累積警告にリーチがかかるセルヒオ・ブスケツを温存するかどうかはもちろんのこと、大幅なローテーションを行う可能性もある……しかし、いずれにしてもスペインの長所は選手たちの名前を超えたところで存在している。L・エンリケはプレーのメカニズムを彼らの記憶にしっかり植え付けているだけでなく、「フットボール的観点から自分たちより上のチームは存在しないと断言させてもらう」と、自己肯定感と自信すら与えているのだから。そのために日本は、まずは完璧な守備を見せることに集中しなくてはならない。

森保が1-4-2-3-1、または1-5-4-1のどちらのフォーメーションを選択するかは分からない。が、それはただの数字の並びであり、さして大きな問題ではないだろう。日本が何にも増して行うべきは、以下の3つだ。

1:自分たちのDFとMFのライン間でスペインの選手たちがパスを受けるのを阻止すること

2:インサイドハーフの引力に引きつけられないこと

3:サイドで均衡を破られないこと

ライン間で待ち受けるペドリにパスを通させてはいけないし、ポジションを左サイドから中央に絞るダニ・オルモとそれによって駆け抜けるスペースを享受するジョルディ・アルバ、そして彼らの逆(右)サイドに張って隙をうかがうフェラン・トーレスの警戒も怠ってはならない。またスペインはたとえ彼らがスタメンでなくとも、その代わりとなる選手たちがそれぞれの個性でもって、似たような役割をこなすことができる。

フォーメーションはさして重要ではないとしても、おそらくDFラインより中盤の人数を増やした方が森保にとって都合が良いだろう。コスタリカはスペイン戦で5バックを使用したが、スペインは彼らのラインを破るパスを何度も通して守備網を切り裂いている。そのことを踏まえれば、日本は守備時にMF3枚で中央を固めた方が良いはずだ。そして、そこで誰よりも鍵を握る選手が遠藤航である(ひざを痛めているということで、出場できればの話だが……)。彼が日本の守備組織の調整役となり、DFラインと中盤の間に空いてしまうスペースを埋めることが期待される。

■スペインの弱点

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日本はまた、スペインのアンカーとインサイドハーフの連係を断ち切ることも求められる。ドイツであればヨシュア・キミッヒ、レオン・ゴレツカ、イルカイ・ギュンドアンがそれぞれペドリ、ガビ、ブスケツを徹底的にマークしていた。彼らが快適にプレーすること、ボールを持って前を向くことを許してはならない。加えて、日本の両ウィングはオーバーラップするスペインの両サイドバックを追いかける必要がある(ドイツ戦の前半は伊東純也がラウムを追わなかった)。このようにして日本が守備で解決能力を有することができるならば、そこから前のめりになっているスペインに速攻を仕掛けて打撃を与えられるはず。スペインは縦に速い攻撃に脆く、なおかつ森保は彼らの守備の穴を突ける選手たちを擁しているのだから。

スペインで最も心許ないのがDFラインであり、日本は前の方でボールを奪うことさえできればチャンスにつなげられる。とりわけスペインのDFラインに並ぶ選手たちのタイプ的にも、サイドバックとセンターバックの間を突くことが肝要だ。コスタリカ戦でなぜか出場時間がなかった久保建英は、そこを突く役割を完璧にこなすことができる。1対1が得意で加速力のある伊東と三笘薫についても同じことが言え、彼らに加えて浅野拓磨と鎌田大地のサポートも大切になってくるはずだ。スペインは後退することを苦手としており、攻撃ほどには守備をうまく扱えない。片や日本はドイツ戦で、どんな代表チームにも通用する攻撃手段を有していることを証明した。それはスペインが相手でも例外ではない。

フットボールの試合というものはいつだって予測がつかない。その舞台がワールドカップであるならば、なおさらだ。日本はコスタリカ戦を忘れて、ドイツ戦後半に見出した道の続きを歩まなければならない。まずは耐えて、次にフットボールをプレーして、攻め切る――ワールドカップで生き残るためには、そのすべてを落ち度なくやってのける必要がある。ドイツ戦で膨れ上がった期待感が、ここで無に帰することがあってはならないはずだ。

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