GABRIEL JESUS ARSENAL Arsenal

なぜジェズスはアーセナル「理想のNo.9」なのか?アルテタが待望の新FWに求めること

トップターゲットの獲得

まさに、ミケル・アルテタが望んだ契約だった。

夏の移籍市場を前に、アーセナルには前線にタレントが必要なことはわかりきっていた。

以下に続く

ピエール=エメリク・オーバメヤンがチームを離れ、アレクサンドル・ラカゼットも親友の後を追う形でノースロンドンを離れることも明白だった。ここ数回のウィンドーでは、ガナーズはディフェンスと中盤の補強に注力していたが、この夏は攻撃陣が優先されることは間違いなかった。

有力な候補はたくさんおり、アーセナルも様々な可能性を探っていた。しかし、ガブリエウ・ジェズスがトップターゲットであることは以前から明らかだった。

ジェズスは、アルテタがマンチェスター・シティにいた頃からよく知る選手だ。このスペイン人指揮官が太鼓判を押すジェズスは、アーセナルをさらなる高みに押し上げるために必要な能力をすべて持ち合わせている。

「本当に嬉しいね」。4500万ポンド(約73億円)の契約が確定したことを受けて、アルテタはこう語っていた。「これほどのレベルの選手を獲得できたことは、クラブにとって素晴らしいことだ」

「ガブリエウのことは個人的によく知っている。彼がプレミアリーグに来たときから、誰もが彼をよく知っているはずだ。素晴らしい成功を収めていることもね」

「長らく我々が探し続けてきたポジションだ。そして今回、全員が望んでいた選手を獲得することができた。だから本当に嬉しいんだ」

完璧にフィットする理由は…

jesus-arteta(C)Getty Images

アルテタ、テクニカル・ダイレクターのエドゥ、そしてアーセナルの補強体制における中心人物たちがクラブの攻撃を立て直すため席についたとき、そのビジョンは明確だった。

当然、議論の中心はピッチ中央・ゴール前で脅威をもたらせる選手の補強だ。

だが、ここで最も重要なのは、ここ2年間でアルテタが苦労してチームに浸透させたシステムを破綻させない選手であるべきだということだ。アーセナルは、ペナルティエリアで仕事ができるストライカーを望んでいたが、同時にアルテタが率いる若いチームに期待されているような、高いインテンシティを持ってプレーできる選手が必要だった。

そしてジェズスは、彼らが求める全ての条件を満たす選手である。アーセナル上層部はそう考えている。

自分で得点を決めることができ、連携も可能で、前線からのハイプレス時も連動して相手を追い詰めるために献身的に働いてくれる。

アーセナルにとって完璧なプロフィールだ。だが、それでもこの移籍を疑問視する声も上がっている。それは彼のプレミアリーグでのキャリアハイは2019-20シーズン、14ゴールにとどまっているからだ。

マンチェスター・Cという、欧州最高の攻撃力を誇るクラブで5年間プレーしてきたことを考えれば、たしかに物足りない数字ではあるだろう。

だが、エティハド・スタジアムでスタメンの座を確保できたことがないことを付け加えなければならない。ここ数年間、ジェズスはセルヒオ・アグロの二番手としてプレーせざるを得なかった。そしてこのアルゼンチン人が去ってから、ペップ・グアルディオラはいわゆる「ゼロトップ」を採用。アグエロの代わりには他の選手が優先され、ジェズスはベンチで新たな攻撃システムが構築されていく様を見る機会も多かった。

それでも、機会を与えられれば常にその期待には応えてきた。

2017年1月にシティに加わって以来、ジェズスはプレミアリーグで58得点を挙げ、29アシストを記録している。「107分に1ゴール」直接絡んでいる計算だ。1992年にプレミアリーグが始まって以来、この数字を超える選手は6人しかいない。

スタメンで出場した試合はさらに良い。マンチェスター・Cで先発したプレミアリーグの99試合で53回ネットを揺らしており、さらに23アシストも記録しているのだ。これほどのスタッツを残せる選手は、そう多くないだろう。

「3つ、4つの異なるポジションでプレーできると思う。毎日神に感謝しているよ。でも、僕は9つのポジションでやれると思っている」。アーセナルにもたらす自身の役割について、ジェズスはこう答えている。

「ボールを持っていても持っていなくても、ピッチで助けになれることが僕の一番の持ち味なんだ。アシストでチームを助けることができるけれど、もちろん僕はストライカーだから、得点を決めなければいけないね」

ジェズスに求められること

Gabriel Jesus Arsenal Nurnberg July 2022Getty

アルテタは昨シーズン後半から採用した4-3-3システムにおいて、ジェズスをセンターFWとして起用しようとしている。

この役割をエディ・エンケティアと共有することになるだろう。彼は2021-22シーズンの後半戦で成功を収め、新契約を勝ち取った。新シーズンも常に一定の出場時間を与えられるだろう。

だが、序列の頂点に立つのはジェズスだ。当然得点を決めることを期待されているが、同時にひたすらディフェンス駆け引きし、恐怖を与えることも与えられた任務の一つだ。

「我々のスタイルは、高いインテンシティでハイプレスをかける。走れる選手が必要になった時、(ジェズスは)世界一の選手だ」。グアルディオラは昨シーズン、ジェズスをこう評価している。

「彼のお陰で私たちはハイラインを保つことができ、これほどまでにアグレッシブでいられるんだ」

これこそが、アルテタがアーセナルでジェズスに望むことなのだ。ペナルティボックスだけ活きるのではなく、疲れを見せずに周囲を走り回り、ブカヨ・サカ、ガブリエウ・マルティネッリ、マルティン・ウーデゴールといった選手たちと完璧に連携できる選手が必要なのだ。

昨シーズンのアーセナルには、ファイナルサードでこういった働きができる選手がおらず、その結果、得点力不足に悩まされた。ラカゼットは深く落ちてくることを好むため、ボックスに選手がいなくなることが多かった。ジェズスが加わったことで状況は確実に変化するだろう。このブラジル人がプレミアリーグで記録した58得点は、すべてボックス内からのものだ。

アルテタは夏のウィンドーを迎えるに当たって、アーセナルに加入する選手は皆、2022-23シーズンに向けてクラブをレベルアップさせる選手でなければならないと明言した。そしてジェズスこそ攻撃陣を変革させる選手であり、アーセナルはまさにその選手を手に入れた。

指揮官就任から約3年。長い歳月を経て、アルテタはついに「理想のNo.9」を手に入れたのだ。

文=チャールズ・ワッツ(『GOAL』アーセナル番記者)

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