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【NXGN Jリーグ】経験を積む“闘犬”。世界を見据える湘南ベルマーレMF田中聡は「ガムシャラ」を脱して次のレベルへ/インタビュー

 7月中の明治安田生命J1リーグの5試合を1勝3分け1敗で走り抜けた湘南ベルマーレ。主力としてその全試合に出場した田中は、連戦の中でも攻守に高い強度を保ち、勝ち点獲得に大きく貢献している。

 『GOAL』では「NXGN Jリーグ」の4月度月間最優秀若手選手に田中を選出し、DAZNとサッカーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」の枠組みでインタビューを実施した。(インタビュー日:8月18日 聞き手:上村迪助/GOAL編集部)

■週1試合より週2試合、連戦は大歓迎

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――今季ここまでの手応えをお教えください。

以下に続く

 シーズンが始まって、最初はチームとしても結果が出なくて、個人的にも全然パフォーマンスも上がらなかったというか調子が悪く、あまり上手くいかないなと思っていました。途中から試合に勝てたり、パフォーマンスも上がったり、自信もついてきました。途中から負けなしが続くこともあり、チームとしても良い試合ができる試合が増えたと思っています。

――この世代の選手として突出して多くの経験を積まれている選手の一人ですが、経験の多さが今季に繋がっていることはありますか?

 良い意味でも、悪い意味でも、プロの試合に慣れてきた部分があります。その中で若干の緩みや、逆により落ち着いてプレーできるところも増えました。メンタル的にも落ち着いてプレーできることが増えたなと思っています。

――やはり戦う姿勢が目立っていますが、今季改めてその部分で意識していることはありますか?

 そういう部分は自分の特長でもあると思うので、そこが出ないと自分が出る意味がなくなると思います。監督もそういう部分を買って自分を試合に出させてくれているところもあると思うので、戦う意識や走ること、球際、対人で負けないというのは自分の武器でもあります。まずはそこを出さないと自分としての価値がないと思うので、そこは毎試合毎試合、意識している部分ではあります。

――7月中までのデータでは今季リーグ戦の空中戦勝率が80%を記録しています。競り勝つために考えていることがありましたらお教えください。

 結構、自分としては苦手意識を持っています。ゴールキックや相手のパントキックを競るのはすごく苦手なんですが、ちょっとしたルーズボールやワンバウンドしての空中戦とかであれば、思い切っていけます。それほどためらうことなくいけるので、気持ちの面でもビビらないということも大事なのかなと思います。

――空中戦で競り合いに行く判断にも影響しているかもしれないですが、今季はより良いポジショニングからチェックに行けているように見えています。

 1年目とかはガムシャラにやって、ただ1つのボールを追いかける感じでした。ですが、最近は無駄な動きを減らしていく、もっと良いポジションに立っていればもっと楽に奪えたり、触らなかったらボールがインターセプトできたり、そういうことも山口智監督からも言われています。サボってからボールを取りに行くのではなく、良いポジションをとってからボールを奪うことによって、自分の体力的にも省エネにできます。そういうプレーはすごく心がけて、気を使ってやっています。

――省エネというところですと7月はかなり気温も高い中で全5試合に先発。フル稼働で夏場の連戦を乗り切るために意識したことはありますか?

 中3日とかの試合とかは当然キツいですが、試合までの準備などサッカー以外のところでちゃんとした食事をとるとか、サッカー選手をやっている人なら当たり前ですが、そういうオフ・ザ・ピッチのシーンでもよりこだわっています。自分の体のマネジメントという部分に関しても、より気を使っています。あとは1週間に1試合より、1週間に2試合ぐらいあった方が、自分のコンディションも上がっていくので、連戦の方が動ける感覚はあります。

――負荷のかかるポジションで連戦の方が動けるというのは不思議なところもありますが、昔からそのような傾向がありましたか?

 自分がプロ1年目でやっている時は連戦だったので、連戦が当たり前みたいな感じではありました。どちらかといえば連戦の方が自分は慣れていたので、最近は1週間に1試合になって、練習では自分の中でより強度を上げています。連戦があれば常に(強度が)上がっている状態にあるので、個人的にですけど、コンディションが上がる印象ではあります。

――7月の選考にも関わった部分ですと、第21節サンフレッチェ広島戦(7月10日)の後半AT、同点の状況で広島のカウンターを果敢に止めたプレーがありました。あの時間に後方から追いついてチェックをかけ、奪った時はどのような気持ちでしたか?

 試合の中盤は少し足が止まっていたところも個人的にはあったので、最後に『ラストワンプレー頑張ろう』という気持ちで走りました。あれは審判によってはファウルをとると思うので、運良くとられなかったのでありがたかったですが、シンプルに気持ちで勝ったというのもありますし、あれが自分の良さだと思うので。最終的にはチームメイトが取ってくれましたが、自分で奪い切りたかった気持ちもありました。嬉しいのと同時に、ノーファウルでしたけど、もっと綺麗に取りたかったというイメージはあります。

――既に多くの試合で経験を積んでいますが、年齢的には伸び盛りでもあります。自身の中で「今ここが一番伸びている」と感じる部分はありますか? または、これから伸ばしていきたい伸びしろを感じる部分をお教えください。

 守備はここ最近、Jリーグの中でも奪える自信はついてきました。自分の課題の攻撃面は、伸びしろはすごくあると思います。ビルドアップでミスしなかったり、例えばミドルシュートを決められたり、攻撃面でもっと結果を出せたら、もっとチームとしても上位に行けますし、個人的にももっと評価されると思うので、そこは自分が今やっているところではあります。

■「40歳近くまでサッカーを続けたい」

20220820_Tanaka(C)Getty images

――クラブの話題から離れて、田中選手のサッカーの原点についてお聞かせください。サッカーを始めたきっかけはおぼえていますか?

 兄がサッカーをしていて、それについていったのがきっかけです。幼稚園、3歳、4歳ぐらいから、遊びではありますけどサッカーをしていました。小学校に入ってからクラブで本格的にサッカーをしました。

――小学生年代では長野の名門長野FCガーフでプレーし、ジュニアユースからAC長野パルセイロU-15に入りました。Jクラブの下部組織に入る際の決意などはありましたか?

 一番身近にあったクラブが(AC長野)パルセイロで、自分も小学生の頃にパルセイロの試合をスタジアムまで見に行っていました。小学生の時の先輩たちも上手い人はパルセイロのセレクションを受けに行っていて、そういう流れができていたので、当たり前のようにセレクションを受けてという感じで進路を決めました。

――育成年代で経験したポジションをお教えください。

 ボランチのこともありましたし、FWもやりました。小6の時はFWをやってバンバン点を取ってました。小学生の頃はたまにCBをやることもあり、色々なポジションをやらせてもらいました。

――その中でボランチがしっくりきたということですね。

 実際にボランチを本格的にやったのは湘南のユースに来てからでしたが、時期によってポジションは別のところをやっていたので、そういう意味では成長できた部分なのかなと思います。

――また話題が変わりますが、世代別代表としても大きな期待を受けています。ご自身の中で2024年パリ五輪はどのような大会と位置付けていますか?

 すごくタイミングが良くて、自分の1個上の世代がパリ世代の一番上の年齢で、自分もその代表活動に何回か参加させてもらっているので、もちろん出場したいです。でもJリーグの他のチームで活躍しているボランチ、譲瑠(藤田譲瑠チマ)とかたくさんいます。今はまだ選ばれるかは分からないですけど、そういう選手たちに勝っていかないと試合にも出られないと思いますし、パリのメンバーにも選ばれないと思うので、そこはもっとやっていかないとダメなのかなと思っています。

――ボランチでもかなりレベルの高い争いとなる世代です。藤田譲瑠チマ選手の名前も出ましたが、同世代では特に藤田選手を意識しているということでしょうか。

 そうですね。他にも京都サンガF.C.の川崎颯太選手やガンバ大阪の山本理仁選手、清水エスパルスの松岡大起選手など、名前を挙げればたくさんいるので、そういう人たちに勝っていかないと選ばれないと思いますし、今の段階で試合に出られるかと言われたら出られないと思うので、そういうことに関していえば、もっと欲を出していって(世代別代表でも)スタメンで出られるようにできたらと思います。

――世代別代表でよく話す選手、仲の良い選手はいますか?

 さっき話に出しましたが、譲瑠とかは結構連絡も取り合ったりしていて、U-17のワールドカップから一緒にやっているので。彼はすごく、先輩ですけど自分もタメ口で話しているぐらい仲が良いです。後輩ですけどサガン鳥栖の中野伸哉選手も。ああいう年下の選手からも刺激をもらっている感じです。

――キャリアの中で、長期的に描いている目標がありましたらお教えください。

 まずは海外に行って、A代表に選ばれること、オリンピックももちろん出たいですし、サッカーしている人ならみんな知っているような選手になりたいなというのは思っています。あとは、40歳近くまでプロとしてサッカー選手を続けていきたいというのも目標です。

――最後になりますが、二十歳の誕生日(8月13日)おめでとうございます。二十歳の抱負や今季これからの意気込み、ファン・サポーターの方々に向けたメッセージをお聞かせください。

 二十歳になってサッカー面もそうですが、大人としても人間として成長できるように。ピッチ外でも見られる立場になったので、言動にはしっかりプロ意識をもって行動していきたいです。ファン・サポーターの皆様には、これからもサッカーを通して勇気や感動、サッカーの楽しさを伝えられるように日々の練習を頑張っていくので、これからも応援よろしくお願いします。

■「NXGN Jリーグ 2022」月間表彰

「NXGN(ネクストジェネレーション) Jリーグ 2022」月間表彰では、2022シーズンの明治安田生命Jリーグ(J1、J2、J3)のクラブに所属しており、かつ2001年1月1日以降に生まれた選手を対象とし、各月ごとに最も輝いた若手を選出。月間最優秀若手選手として表彰する。

■プロフィール

MF 7 田中聡 Satoshi TANAKA
2002年8月13日生まれ。173cm/70kg。長野県出身。利き足:左。長野FCガーフJr,-AC長野パルセイロU-15-湘南ベルマーレU-18を経て2021年トップ昇格。J1通算70試合出場2得点、ルヴァン杯通算14試合出場(2022年8月18日時点)。

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