今年度の『Goal 50』が火曜に発表され、ネイマールは男子部門で4位だった。
年に一度のランキングで自身の過去最高タイの順位を与えられたが、これは主にパリ・サンジェルマン(PSG)クラブ史上初めてチャンピオンズリーグの決勝に進出したことによるものである。
そのため、ネイマール個人の順位は大いに議論を呼んでいる。トーマス・トゥヘル監督率いるPSGの歴史的快挙にネイマールはどれほど貢献したのだろうか。
『Goal』の中でもネイマールの評価は真っ二つに割れた。まずはグローバルの副編集長であるマーク・ドイルの意見から見ていこう。
■ネイマールはクラブの中ですら4番目
ネイマールはまさにミスター期待外れだ。
悲壮な叫び声をあげて大げさなダイブをし、自身が悪意あるタックルの犠牲者である。
だが、ネイマールには他にも最高のトリックでもぎ取ったものがあると言える。それが今年のGoal 50での4位だ。
ネイマールが世界で最も才能ある選手のひとりであることは間違いない。現在のサッカー界において、とてつもない天賦の才をもつ選手であることは誰も否定しないだろう。キラキラと輝く素晴らしい技術を次々と繰り出し、見る者を魅了する。
だが、ネイマールは2019-20シーズンにおける最高の選手のひとりなのだろうか。とてもそうは思えない。
Getty/Goalこれだけははっきりさせておこう。Goal 50は性格や過去の実績、将来性、人気を考慮すべきではない。昨シーズン全体を通しての選手の“プレーの質”のみを見なければならない。
とすれば、ネイマールがGoal 50で4位となったことはまったくもって納得のいかないことだ。
2015年に4位になったときのネイマールはシーズンを通して活躍し、リオネル・メッシやルイス・スアレスとともに過去最高の攻撃トリオ“MSN”と評され、49試合に出場して31得点、バルセロナの3冠達成に欠かすことのできない重要な選手であった。
Getty/Goal翻って2019-20シーズン、パリ・サンジェルマンは再び3冠を達成した。歴史的4冠に届かなかったのは、唯一チャンピオンズリーグ決勝でバイエルン・ミュンヘンに敗れたからだ。
ただし、ネイマールはその舞台でのスターではなかった。控え選手のひとりでしかなかったのだ。負傷するまで好調だったのは確かだが、リーグ・アンでは15試合しか出場していないのも事実である。
確かにチャンピオンズリーグのラウンド16においてボルシア・ドルトムント戦で決定的な仕事をした。だが、PSGの決勝進出までの道のりにおいて彼が拍手喝采されたのはそれがすべてで、リスボンで行われた準々決勝以降の試合では1点もとれなかった。
ネイマールを支持する人は、準々決勝のアタランタ戦を制したときの、エリック・マキシム・チュポ=モティングへのお膳立てのパスが素晴らしかったとか、ベスト4でのRBライプツィヒ戦のアシストが抜群だったと言うだろう。
しかし、それを言うならアンヘル・ディ・マリアやマルキーニョスのほうが、ポルトガルでのCL決勝ラウンドもシーズン全体を通しても、はるかにチームに貢献していた。もっと言えば、アタランタ戦では30分しか出場しなかったキリアン・ムバッペのほうがずっと印象が強い。ネイマールのチャンピオンズリーグでの印象は尻つぼみだ。
ネイマールは決勝でも何もできなかった。何度もチャンスを逃し、コントロールも思うようにならないでいた。事実、バイエルン戦ではボールタッチの47%で失敗している。
それでも、ネイマールはその得意の“トリック”で素晴らしいプレーをしたと思わせるのに成功した。馬鹿げたことに、「ネイマールにとって素晴らしい1年だった」と思う人々さえいるのである。PSGには彼よりも長い時間プレーした選手が12人もいるのに。ディ・マリアのアシスト数はネイマールよりも11多く、ムバッペは彼より11得点多く決めている。
それなのに、ネイマールは世界で第4位の選手なのか?せいぜいクラブの中で4番目の選手だろう。
■サッカーを誰よりも楽しむクラック
Goalフランスサッカーを中心に見てきた私、ロビン・ベアナーはネイマールの功績を高く評価している。
現代サッカーにおいて、ネイマールほど、ポルトガル語でいう「オ・ジョゴ・ボニート(美しいサッカー)」の精神を具現化している選手はいない。
彼は反則なほどに見事な技術や唯一無二のイマジネーションで相手を倒す方法を見つけ出し、ファンをワクワクさせる他の選手にはない才能を持っている。
ストリートサッカーを彷彿とさせる彼独特のゆるやかな歩調は、傲慢さや相手を小馬鹿にする態度だと誤解されることが多い。だが実際には、ネイマールはただ楽しんでいるだけなのだ。
彼のレインボー・フリックに翻弄された相手がYouTubeの動画の中で永遠にいじられてしまうからと言って、ネイマールの才能あふれるプレーのカットなどされていいはずがない。ネイマールはディフェンダーを憤らせる個性の持ち主であり、それは必ずよくない副作用をもたらす。現在のサッカー界でこれほどアンフェアな扱いを受けている選手はいない。
絶好調のときのネイマールは嗅覚に優れ、予測不能で楽しいスタイルを観客に見せてくれる。昔のガリンシャやペレのようだ。急速にグローバル化し均一化する世界の中で、ネイマールは称賛されるべきであって、悪く言われる筋合いはない。
Gettyスタイルもさることながら、ネイマールはたしかな実績も残してきた。2019-20シーズンはケガと病気に苦しんだ一年だったが、公式戦27試合で19ゴール12アシストを記録している。
クラブのチャンピオンズリーグ決勝進出におけるネイマールが果たした役割も大きい。ラウンド16でドルトムントに勝利した試合でのPSGの3得点中2得点がネイマールだったし、その後、アタランタとRBライプツィヒの試合では、決定的なアシストを決めた。フィジカル面では絶好調ではなかったのに。
CLの最終局面において、ネイマールの悪口を言いたがる人々がよく言うエゴイストな面はまったく見られなかった。アタランタを相手に驚異的な準々決勝を戦った後、ネイマールは即座にこの試合のマン・オブ・ザ・マッチは、途中出場から決定的な仕事をしたFWエリック・マキシム・チュポ=モティングだと称賛した。
今季からPSGへと加わったアレッサンドロ・フロレンツィも「移籍してきて、最も強い印象を与えたのはネイマールだ」と話し、実際の姿は世間と異なるイメージであったことを明かしている。
「練習中のネイマールを見れば、一生懸命で真面目だし、毎日ボールを使って練習している。他の選手の手本になろうとしているし、試合だけでなく練習でも熱心だ。彼は真似すべきリーダーだよ」
ネイマールを批判する人々は彼の芝居を非難する。2018年のワールドカップを境に、劇的にしなくなっているというのに。私生活でのプレイボーイぶりも、ネイマールを高く評価しない理由にはならない。
ネイマールの才能は容易に見過ごすべきではないし、サッカーを楽しんでいる姿を軽々しく軽蔑すべきでもない。彼はGoal 50の4位にふさわしい。彼はサッカーを「美しい」スポーツにした選手だ。愛すべき選手なのである。
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