間近に迫ったカタール・ワールドカップ。11月20日の開幕に向け、日本代表を含む各国代表メンバーも発表され始めるなど、いよいよ4年に一度の祭典に向けてムードも高まってきた。
しかし今回のワールドカップは、ヨーロッパ主要リーグのシーズン真っ只中である11月に開催することに。シーズンオフ期間の夏に行われることが通例となっていたが、開催時期を含め、カタール・ワールドカップは“異例ずくめ”となっている。
ではなぜ11月にワールドカップを開催するのか？ そもそもなぜ、カタール開催が決まったのか？ イタリア在住ジャーナリストの片野道郎氏は、そもそも開催地決定投票の段階で異例の出来事があったことを指摘する。
「カタールでのワールドカップが決まったのは、今から12年前（2010年）。これまでは6年前にFIFAの理事会で投票して決定するスケジュールだったが、『これからは大陸連盟の持ち回りにしよう』という流れになった（※過去2大会で開催した地域以外で決定するという暗黙の合意）。ですが、2010年には2018年と2022年の2回まとめて決めるという強引な提案を当時のFIFA会長（ゼップ）ブラッターが出してきた。それはなぜかとはっきりいえる人物は未だにいないですが、色々な利害関係で決定して、2010年に2回分の投票をやることになりました」
「2018年は、ヨーロッパではドイツ以来（2006年）開催していなかったので、ヨーロッパだというなんとなくの合意がありました。そこで最有力候補はイングランドだった。他にもアメリカや日本も立候補が噂されていましたが、『2018年はヨーロッパだろう』という流れで見送ることになりました。蓋を開けてみたらものすごい勢いでロシアが勝ちましたが……」
「そして次の2022年は、ヨーロッパがなくなり、南米がなくなり、アジアか、アフリカか、北中米か。その中で有力となったのが、アジアがカタール、北中米がアメリカだった。アメリカは1994年大会以来開催しておらず、メジャー・リーグ・サッカーもこの30年近くで大きくなり、発展に重要なタイミングだということで色々な合意があったようで、アメリカが最有力と言われていました」
■カタール開催決定の“闇”
しかし、2022年大会の開催地はカタールに決まっている。片野氏によると、開催地投票の1週間前に大きな出来事が起こったようだ。
「当時のUEFAの（ミシェル）プラティニ会長も、『2018年はヨーロッパでやりたいから、2022年に移ってくれれば、UEFAはアメリカを支持する』という話をしていたと。だからアメリカが有力だったんですが、投票をやってみると、カタールに決まります」
「なぜそういうことになったかというと、直前までアメリカを支持すると言っていたUEFA（プラティニの持っていたUEFAの票）が、土壇場でカタールに投票したから。UEFAの理事は22人いたんですが、その中ではっきりと自分の投票先を明言したのはプラティニだけでした。プラティニは当時『当初はアメリカに投票するつもりだったが、様々なことを検討した結果、カタールに投票した』と明言しています」
「でも、そのあとで明らかとなってきたのは、プラティニが投票の1週間前くらいにフランスの大統領府で、当時のニコラ・サルコジ大統領とカタールの皇太子や王族と会食しているんです。後にブラッターが語っているんですが、プラティニは『UEFAはアメリカをもう支持できず、カタールを支持することになった』と電話したという話もあって」
「つまりカタールとフランスの間の国際的な外交関係があって、カタールは大統領を通してプラティニに強い圧力をかけた、という話があるようです。その根拠としてあるのは、カタールでの開催が決まった次の年、カタール投資庁を通して、パリ・サンジェルマンを買収しています。さらにカタール国営放送局（アルジャジーラ）は、リーグ・アン（フランス1部リーグ）の放映権も購入している。そしてカタールは、1機何十億円という戦闘機をフランスから大量に買っていると。そういう外交的な結びつきや圧力があってプラティニが意見を変えたというのは、誰も認めてはいませんが、状況証拠は揃いすぎていますよね」
「ですのでかなり強引に、キャスティングボートを握っていたUEFAが寝返ったことで、カタールに決まったというのがあって。その裏にはカタールとフランスの強い関係があったようです。そしてカタールで開催するには（気候の問題で）夏にはできず冬にやるしかないので、そこから色々なことが決まっていくという流れになりました」
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