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「世界が求めてきた」久保建英の理想像へ!ソシエダ初陣で見せた“並外れたクオリティ”を発揮できた理由

今夏レアル・ソシエダに加入した日本代表MF久保建英が、公式戦デビュー戦でいきなり結果を残した。

これまでレアル・マドリーに所蔵しながら、マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェと様々なクラブをレンタルで渡り歩いてきた久保。しかし今夏、ついにレアル・マドリーを離れてソシエダへと完全移籍を決断。大きな注目を集める中、カディスとのラ・リーガ開幕戦に先発出場を果たす。

すると24分、右サイドの浮き球パスを左足で巧みにコントロールし、豪快なボレーシュートを叩き込んで見せた。初陣で初ゴールを奪っただけでなく、攻撃時には大きな存在感を放って78分までプレー。試合後にはラ・リーガのマン・オブ・ザ・マッチに選出されるなど、多方面から称賛を浴びている。

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そんな日本代表MFは、なぜソシエダの初戦で輝くことができたのだろうか? スペイン大手紙『as』の試合分析を担当するハビ・シジェス氏が、チームメイトとの関係性、そして“並外れたクオリティー”を解説する。

■解放

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久保建英の炎が、レアル・ソシエダでついに燃え上がった。それはカディス戦で決めたゴールや、素晴らし過ぎた個人プレーだけを意味しているわけではない。もっと大きな、大切なことだ。

イマノル・アルグアシル率いるソシエダでプレーする久保を見ていると、間違いなくこれまでとは違う感覚を得られる。これまでいくつものクラブを彷徨い、五里霧中だった選手が、ようやく解放されたのだと感じられる。ただ、これが驚くべき出来事ではないことも、また確かである。久保にとって、ラ・レアルが最も“ハマる”チームであるのは、自明の理だったのだから。

マルティン・スビメンディ、ブライス・メンデス、ミケル・メリーノ、ダビド・シルバ……足元の技術に(も)秀でた選手がこれだけ揃っていれば、最高の久保を引き出せるのだ。彼らが舵を取るソシエダは迫力あるポジショナルプレー、アタッキングサードにおける質の高いポゼッションを実現できる。

久保の攻撃時のポジションについては、ウィングでも、トップ下でも、カディス戦のようにセカンドトップでも、どこでもいい。ポジションではなく彼ら全員と連係すること、ポジションを入れ替えることによって、そのポテンシャルが引き出されるのだから……とはいえ、このカディス戦でイマノルが、中盤ダイヤモンドの1-4-4-2で久保をセカンドトップにしたのは意外と言えば意外だだった。久保はプレシーズンマッチ4試合で一度も同ポジションでプレーしたことがなかったが、創造的な中盤の選手をもう一人増やす上でも、その采配は的中していたと言える。

■全員が認めた「並外れたクオリティー」

久保は相手チームのDFとMFのライン間だけを仕事場にしていたわけではなく、マークを外す動き、縦への突破でソシエダに深みを取らせようと試みていた。メリーノの浮き球アシストから記録した決勝ゴールについては、カディスがビルドアップでミスした後、相手サイドバック&センターバックの間のレーンが空いていることを確認していたし、後半にクロスからシルバの決定機を導いた場面でも抜け目なくスペースを突いている。

久保のプレーエリアは極めて流動的で、サイドに流れたり、トップ下のシルバや左インサイドハーフのミケル・メリーノとポジションを交換したり、アレクサンデル・イサクが相手DF陣を引き連れて空いたスペースに飛び込んだりと、インテリジェンスのある動きを見せ続けた。加えて守備面でも手を抜くことはなく、相手センターバックに疲れ知らずのプレッシングをかけ続け、中盤の選手にボールが通ることを妨げている。カディス戦終了後、イマノルはラ・リーガのMOMにも輝いた久保について、こんなことを語っていた。

「デビュー戦でいきなりゴールを決めたわけだが、私が彼について最も好ましく思っているのはその仕事ぶり、チームに溶け込んでいる様子なんだ。それは今日の試合の入り方だけではなく、ここにやって来た日から感じられたことだった。私という監督のことをすでに知っていたのか、情報を受け取っていたのかは知らない。だが、まるで私たちと3年を過ごしているかのようだ」

おそらくイマノルは、久保が20回ボールを失っても、11本パスをミスしても気にしていない。なぜなら、ソシエダはアタッキングサードのミスをカバーできるようなポジショニング&プレスのオートマティスムを確立しており、何より久保の生産性のある動きにはミス以上の価値があるからだ。イマノル含めて、試合後に行われたソシエダ関係者に対するインタビューでは、全員が久保の凄まじさについて、その感想を問われるほどだった……その質問に対する彼らの共通した見解はもちろん、「並外れたクオリティーの持ち主」である。

■世界が求めた理想の姿へ

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チーム内に一人だけポツンといる“違いを生み出す選手”ではなくなり、似通ったプレービジョン&技術を有する選手たちと一緒になった久保。これから連係を深めるに連れて、チームメートたちさえ認めるその“並外れたクオリティー”を最大限発揮できるようになるはずだ。久保にとってレアル・ソシエダはまさに理想的なチームであり、日本、スペイン、世界が求めてきた久保の理想像も、ここから具現化されていくことになるだろう。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』試合分析担当

翻訳=江間慎一郎

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