Take Kubo Japan Villarreal Getafe GFXGetty/Goal

レアル・マドリー上層部で「完全移籍も考慮すべき」との声…久保建英の今後はどうなる?7月第2週に話し合い

期待に応えられていない現状

「さて、タケ・クボはどうしたものか……」

今夏、レアル・マドリーのクラブオフィスでは、そんな言葉が何度となく口にされている。

以下に続く

マドリーが久保建英を迎え入れたのは、今から3年前のこと。世界トップクラスの才能を安価で引き入れられるチャンスだとして、迅速な動きで獲得までこぎつけた。が、それからここまで、クラブの期待していたように事は運ばなかった。マドリー内部で、この日本人選手に対して失望の感情が生まれているのは、もう秘密でも何でもない。彼らは、久保が日本人選手として史上最大スケールの軌跡を描けると考えていたのだから。久保を獲得した際に支払った移籍金200万ユーロで、4回のレンタル移籍で手にした額を考えれば、金銭的に有益なオペレーションではあった。とはいえ彼にかけていた期待は、そうした“はした金”を何倍も、何十倍も上回っていたのだ。

マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、もう一回マジョルカ……。久保はここまでプレーしてきた4チームで、コンスタントにその才能を発揮してきたわけではなかった。その輝きはあまりに断続的で、2021-22シーズンに至っては消え入るようでもあり、マドリーは彼に疑いの目を向け始めている。確実に、現在の久保はカルロ・アンチェロッティ率いるチームで居場所を手にできるレベルにない。それは“想定し得る”問題として散々言われてきた、パスポートの問題に関係なく、である(久保は日本人であることをやめない限りスペイン国籍を取得できない)。

マドリーと久保の契約は2024年まで。フリー移籍まであと2年の猶予がある今夏、クラブが下す決断は重要なものとなる。たとえマドリーでプレーできるレベルになくとも、21歳という年齢の彼にはそこそこの値打ちがあるだろう。クラブ内では「他クラブから完全移籍のオファーが届いたならば耳を傾けるべき」と意見をする者が出始めた。昨夏までは「レンタルでの放出以外はもってのほか」という意見しか存在しなかったのに……。

それでもマドリー上層部で、レンタル移籍を推す声が多数派なのは今なお変わっていない。彼らは久保が状況を逆転させる可能性を信じている。視線の先にあるのは、カタール・ワールドカップだ。同大会で日本代表MFが活躍すれば、マドリーは彼を保有し続ける意味が正当化できる。たとえ活躍しなくても、すでに今季のレンタルは済んでおり、そこでも金は手に入っている。レンタルを推す人々にとって理想的なのは、今季中に契約延長を結ぶこととなる。その目的は、現契約の最終シーズン(2023-24)に選手側だけで去就を決断させるのを防ぐためだ。

7月第2週にレアル・マドリーと話し合い

Florentino PerezGetty Images

久保の移籍先として、ここ最近にレアル・ソシエダが浮上。目新しい移籍先候補というわけではない。2年前、マルティン・ウーデゴールがラ・レアルで積んだ経験に満足していたマドリーは、久保をサン・セバスティアンに送り出そうとしていたのだから(結局はビジャレアルに移籍)。両クラブの関係は良好そのものだが、しかしマドリーにとって現在のラ・レアルは数あるレンタル移籍先候補の一つという位置付けだ。付け加えれば、スペイン国籍取得がほぼ不可能な久保は、同国の居住年数を伸ばす必要なく国外のクラブでも挑戦できる。

ラ・レアルについて、マドリーと久保はスポーツ面のことについても考えなくてはいけない。ラ・レアルは基本的にポゼッションフットボールを実践し、彼にとっては適応しやすいチームとされている。が、それはわずか半シーズンで去ったビジャレアルに加入したときにも言われていたことだった。またプレーポジションについて言及すれば、アドナン・ヤヌザイ(フリーで退団)、ポルトゥ(ヘタフェ移籍)が去った右ウィングに居場所を見出すこともできそうだが、右インサイドハーフを主戦場とするスペインの生ける伝説ダビド・シルバと役割が重なってしまう可能性もある……逆を言えば、シルバのようなプレースタイルを身につけることが理想とされてきた久保にとって、絶好の学びの場となるかもしれない。

久保は7月の第2週にマドリーと話し合う予定(早急に未来を決める必要性に迫られない限り)。一時期は、マドリーの未来を担う選手とされてきた久保だが、そうした声は確実に少なくなっている。それが間違いであることを証明できるか……。2022-23シーズンこそがそのキャリアの大きな分かれ道、勝負のシーズンとなる。

取材・文=ミゲル・アンヘル・ララ(Miguel Angel Lara)/スペイン『マルカ』レアル・マドリー&スペイン代表番記者

翻訳=江間慎一郎(Shinichiro Ema)

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