Infantino saudi(C)Getty Images

サウジ&FIFA vs カタール&UEFA?2030年ワールドカップ招致活動に潜む政治的な思惑

■2030年招致活動も異例ずくめ

間近に迫ったカタール・ワールドカップ。11月20日の開幕に向け、日本代表を含む各国代表メンバーも発表され始めるなど、いよいよ4年に一度の祭典に向けてムードも高まってきた。

そんな中、今年6月からは2030年大会のワールドカップ開催地の立候補がスタートしている。『The Athletic』の報道によると、「スペイン・ポルトガル・ウクライナ」、「ウルグアイ・アルゼンチン・パラグアイ」、「サウジアラビア・ギリシャ・エジプト」、「モロッコ」の4つが立候補を表明している。この2030年大会の招致活動について、イタリア在住ジャーナリストの片野道郎氏は、配信中の『GOAL Japan』ポッドキャスト内で以下のように語っている。

「2030年は、今度はアジア(2022年カタールで開催)と北中米(2026年にアメリカ・カナダ・メキシコで共催)ができなくなる(※過去2大会で開催した地域以外で決定する)ので、ヨーロッパと南米とアフリカが主な候補に。あとはオセアニアで、オーストラリアは以前から開催希望を表明していますが、あまりにも経済効果が見込めないということで、FIFAは一貫して消極的です」

以下に続く

「スペイン・ポルトガルですが、以前から『次ヨーロッパで開催するならその2つだろう』ということがUEFAの内部で合意されています。そこに、色々な国際的な事情でウクライナを入れようという流れになって。できるだけ多くの国を入れて経済効果をもたらすという意味もあって、ウクライナが入りました。南米に関しては、いわゆるセンテナリオ(100周年)ということで以前から計画しています(※1930年の第1回はウルグアイ開催)」

そしてその上で、「サウジアラビア・ギリシャ・エジプト」のいわば“三大陸共催案”について説明。FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長と、サウジアラビアの関係性が鍵になっているという。

「では、なぜここにサウジアラビア・ギリシャ・エジプトの三大陸共催というのが入ってきたのか。それはFIFAとサウジアラビアの関係が鍵になっていて、インファンティーノとサウジアラビアは近い関係にあります」

「結局コロナの影響で中止にはなりましたが、24チームに参加を増やした最初のFIFAクラブ・ワールドカップに出資していたのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(※ソフトバンクとサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドが共同出資しているベンチャーキャピタル)です。またサウジアラビアは、カタールの成功を見て、最近のニューカッスルの買収もそうですが『サッカーを通してイメージアップを図りたい』というのがある。色々な意味で国際的な地位を高めるためには、“スポーツウォッシング”は重要なテーマになってきているので、サウジアラビアとしてはサッカーに力を入れたい」

■サウジアラビアの利害とFIFAの利害

「インファンティーノとしては、カタールはUEFAと非常に近づいている状況で。FIFAとUEFAの対立と、中東の中でのサウジとカタールの競争が全部リンクしています。FIFAは、サウジにやらせたい。でも、アジアではカタールでやっているので、本当は2030年は開催できない。そのため『地中海でつながっている』という強引な論理で、ギリシャとエジプトの三カ国共催を目論んでいると。インファンティーノが自分で言い出しているので、政治的な思惑は完全に見えていますよね」

「FIFAとしては、建前上『まだそこまで広まっていない地域にサッカーを振興したい』と言っていますが、今までワールドカップしかない財源を広げたいと思っている。ワールドカップも財源として大きくしたいと思っている。UEFAは毎年チャンピオンズリーグがあって、4年に1回EUROもある。ですがFIFAはワールドカップしか財源がなく、4年単位の売上で見るとFIFAよりもUEFAの方がずっと上です。クラブ・ワールドカップの拡張案も、『UEFAの利益をFIFAに付け替えたい』というものだし、ワールドカップを大きくしたいのも同じです」

「ワールドカップを大きくするということは、アフリカとかアジアとか、国の数は多いけどサッカーがまだ振興していない地域の支持得ることに繋がります。国の規模は小さくとも、一票は一票です。それはインファンティーノ会長の権力基盤を固めることにつながります」

「実はインファンティーノは、サウジを含めた三カ国共催の前には中東とパレスチナの共催という案も話していました。彼個人は『世界平和の仲介者になりたい』という野心を持っているとよく指摘されています。ノーベル平和賞が欲しいのだろうと言う人もいうくらいで。こういった経緯もあって、サウジアラビア・ギリシャ・エジプトの案が出てきました」

「サウジはお金がたくさんあって、しかももっと国際的な地位が欲しい。様々な問題から人権的に悪いイメージがついているのを、なんとかウォッシングしたい。ダーティーな利害と、FIFAのビジネス的な利害が色々な意味で一致していしまっている状況の中で、あの案を進めたいと考えているようです」

ポッドキャストでは、ワールドカップと国際政治・外交との関係性、さらにクラブサッカーにまで及ぶ問題点について解説しています。詳しくは以下音声をチェック!

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