川崎フロンターレのMF家長昭博が2018シーズンの年間最優秀選手(MVP)に選ばれた。16年のMF中村憲剛、17年のFW小林悠に続いてJリーグでは史上初、3年連続同一クラブからMVPが選出された。ユース時代から“天才”と称された一方で、“未完の大器”と揶揄されることもあった家長。32歳とベテランの域に達したアタッカーが、なぜJリーグトッププレーヤーに上り詰めることができたのだろうか。
ガンバ大阪アカデミー出身の家長は、04年に2種登録選手としてデビュー戦でゴールを挙げる鮮烈デビューを飾ると、同年にプロ契約を結んだ。G大阪で4シーズンを過ごしたあと、08年から大分トリニータ、10年からセレッソ大阪への期限付き移籍を経験。層が厚いG大阪において定位置を確保できなかったが、特にC大阪ではトップパフォーマンスを披露し、クラブのACL出場権獲得に大きく貢献した。
しかし、その後は苦しい時期が続いた。スペインのマジョルカ、韓国の蔚山現代、G大阪を渡り歩いたが、成績は振るわず。それでも再起を誓った大宮アルディージャでJ2優勝と、16年のJ1上位躍進の立役者となり、瞬く間にチームで欠かせない存在となった。当時の大宮は家長がいるか、いないかで戦い方が大きく変わるほど絶大な影響力を放っていた。
そんな中でも家長に慢心はなかった。「日本を代表する選手がいるなかで挑戦しようと入ってきた」と、17年に数多くのタレントを擁する川崎Fへの完全移籍を選択し、自らの成長を促した。
加入初年度はケガで出遅れた影響でリーグ戦21試合の出場にとどまったが、今季は32試合に出場し、6得点7アシストをマーク。本人は「平々凡々な記録」と謙遜したが、チームへの貢献度は計り知れないほど高かった。
2列目でタメを作ったり、緩急をつけたドリブルで切れ込む。さらには左足から繰り出す正確なパスとシュートで決定的な仕事を遂行する。優勝争い真っ只中の第30節から32節までの終盤戦では3試合連続ゴールを記録するなど、勝負強さも光った。
「隣にいて力はよくわかっている」。チームのバンディエラ、中村憲剛も家長のチームへの貢献度は高いと話す。
「加入当初はうちに合わせようという気持ちがありましたが、それよりも自分の間というか、やりたいことをやり、僕らもそれに合わせることで、どんどんアキも良くなっていった。去年の夏以降は苦しい時に突破口を開いたのはアキの左足でしたし、苦しい時に身体を張って時間を作ってくれたのがアキでした。こんな頼もしい選手はそんなに多くない。数字に直結できるプレーを意識してからすごい怖い選手になった」
川崎Fは「志が高く、選手一人ひとりの向上心が高いチーム」と表現する家長。だからこそ「多くのチームメートから学ぶことがある。みんなのおかげで人としても、選手としても成長できている」と、32歳とベテランの域に達してもなお、向上心を失わなかった。その向上心は家長自身が、最も大事にしている部分に表れている。
「MVPをもらえたことよりも毎年挑戦して成長していくことのほうが価値が高い。MVPをもらえて嬉しいですが、本当に大事なのはそこだと思います」
MVPを受賞しても、慢心しない。来季はリーグ3連覇、苦杯をなめたAFCチャンピオンズリーグでの逆襲を期する川崎Fにおいて、家長の存在はさらに重要度を増すことになりそうだ。
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