2019-08-01-eupen

シュトゥットガルトは「厄介なクラブ」。長年クラブを知る男が語る数々の問題点/インタビュー

32歳ですっかりベテランとなった元ドイツ代表DFアンドレアス・ベックは、VfBシュトゥットガルトとともに降格を経験した後、ベルギーのオイペンへと旅立った。

『Goal』のインタビューに応じたベックはこの一見意外な挑戦の背景について語り、フットボールを続ける上で苦労さえいとわないその理由を明かす。

ベックはさらに惨憺たる昨シーズンのこと、シュトゥットガルトの深部に横たわる数々の問題点についてオープンに語る。

■外から見えるシュトゥットガルトの問題点

Andreas Beck VfB Stuttgart 2019Getty Images

――ベックさん、あなたがこの週末にベルギーリーグのKASオイペンで新しいスタートを切り、一方で、降格したVfBシュトゥットガルトは2部リーグで新シーズンを迎えます。遠くからVfBの周りで起こっていることを何週間か眺めていてどう思いましたか?

たとえばチームメイトたちのことを考えると複雑な気持ちだ。もちろん、自分がいたクラブがあんなふうになることを望む者はいない。この先どうなるのか、本当にはらはらしているよ。VfBが確かな正しい決断を下して、クラブにとって急務となっているフットボールの面での安定をうまく取り戻せることを願うばかりだ。VfBは日々新たに成果をつかみ取り、週を追うごとに土台を固めていく必要がある。VfBはすさまじいパワーのあるクラブだが、そのパワーはプラスの方向にもマイナスの方向にも働くものだ。後半戦で僕たちが大きな成果を挙げていた時には、決していつも素晴らしいプレーをしていたわけではなかったのに、そのパワーに運ばれて波に乗っていた。昨シーズンはそれがまったく反対の方向へひっくり返ってしまっていた。もしかするとちょっと期待に押しつぶされそうになっていたのかもしれない。それは同時に呪いでもあれば恵みでもあるんだ。情熱と伝統は評価すべきものだ。けれどVfBにやって来る者は、自分が何に巻き込まれようとしているのか知っていなければならない。VfBは信じられないくらい厄介なクラブなんだ。

――ユルゲン・クリンスマンのような人物であれば、どんな役割を引き受けるにせよ、その厄介さや、特に強張った組織の構造を解きほぐすことができるだろうと思いますか?

ユルゲン・クリンスマンは確かにプロのフットボールの世界で途方もない経験を積んできているし、そのことに僕は信頼を置いている。けれど、彼がどういう人物であるかに関係なく、しばしばなおざりにされている大事な点がある。つまり、何より重要な基準は適性であるはずなんだ。誰かがVfBで選手として歴史を築いたからといって、それがすなわち、今度のような大きな仕事でリーダーシップを取れるような知識を持っているということにはならない。そんな理由だけで誰かを巻き込むべきじゃないし、その仕事には巨額のお金が絡んでいる。けれどまた一方で、核心となる仕事はフットボールに関することだ。財政面でのノウハウを持っているだけでは十分とは言えない。どこのクラブでも、必要としているのはその両方を結びつけてリードしていける人間なんだ。

――あなたはなぜ新体制のVfBでプレーしないことに決めたんですか?

昨シーズンの間ずっと、僕は曖昧な状況に置かれていた。確かに漠然とした話し合いや希望の持てる兆候はあったけれど、それがはっきりした形を取ることは一度もなかった。正直言って、VfBでこれからも今の状態が続くという前提で考えることに確信が持てなかったんだ。そうするには、あまりにも混乱した1年だったからね。この2年間というもの誰がVfBで全権を握って責任を負っていたのか、もう誰にもほとんどわからなくなっている。確かに僕はずっと態度を保留してきたけれど、フットボールの面で成果を出せずに終われば、ひょっとすると両方の陣営(フロントと選手側)が新たな方向へ向かうことを望むようになるかもしれないとわかっていたんだ。だけど、実際それはまったく正しいことだ。VfBは新しい監督を手に入れて自分の道を進んでいく。うまくいけばいいと思っているよ。そして僕は僕で自分の道を進み、ベルギーで今わくわくするような仕事に取りかかろうとしているところだ。

■「降格はとにかくつらい経験だった」

Andreas Beck VfB StuttgartGetty Images

――降格に終わった昨シーズンは、あなた個人にとってもとりわけ苦いものだったことでしょう。最終局面で、ニコ・ヴィリヒ監督から“シグナルを出す選手”と呼ばれて重要な役割を担っていた、まさにそういう時にケガに見舞われてしまったのですから。

よりにもよってあのタイミングで、僕のキャリアが始まってから初めて手術を受けなければならなかったんだ。確かにあれはすごくつらかったよ。全体的に見て、僕にとっても波乱の1年だった。僕たちはいろいろなフィロソフィーを携えたいろいろな監督の下でプレーした。それまで僕がプレーしていたポジションを他の選手に奪われるような時期も何度もあった。それを受け入れるのは簡単なことじゃなかったよ。けれど、ニコ・ヴィリヒの下で僕は再び自分の力を証明することができたんだ。

――それも、不慣れな役割で。

そうなんだ。僕は中盤のポジションには慣れていなかった。だけど楽しかったよ。あの頃の僕たちは何と言ってもチームに新しい命を吹きこむことにいくらか成功していたし、それに力を貸すことができたんだからね。最後には結局、ピッチの外からチームが降格するのを眺めている羽目になったのはとにかくつらいことだったよ。

――降格のショックを受け入れるまでに長い間かかりましたか?

白状すると、シーズンの終わり頃には僕は部外者として眺めているしかなかったから、そういう意味で妙な気分だったし、他のみんなとは感じ方が違っていたんだ。ずっとチームの中にいて、降格してからやっと気持ちの整理に取りかかることができる場合とは、気持ちの面でまったく事情が違っていたんだよ。僕の方はケガからの復帰に向け、リハビリをやっている最中だった。他に捌け口があったし、その頃にはすでにいろいろ反省を済ませていた。そんなわけで、僕はわりとすぐに気持ちを整理することができたよ。

■「選手は小さな歯車にすぎない」

――降格後にトーマス・ヒツルスペルガーSD(スポーツディレクター)が「世界のどんな監督を招聘できたとしても、どうにもならないだろう」と言っていました。とにかく、VfBでは何もかもが調和を失っているように見えます。あなたは選手としてどう感じていましたか?

もちろん仮定の話にすぎないけれど、もっと早く何らかの決断が下されていれば違ったことになっていたんじゃないかと思うんだ。そうすれば、もっと早くパワーを解放することができただろう。けれど、今さらそんなことを考えても何の意味もないことだ。入れ替え戦2部のチームを相手に力を示すことができなかったのは事実だ。僕は、VfBにはブンデスリーガに残るだけの力がなかったという批評家たちの意見を正しいと認めざるをえない。僕たちが降格したのはまったく当然のことだし、悲しいけれどそれが真実だ。そうなったことにはパズルのたくさんのピースが関係している。けれど、あるシーズンに7位になったチームが次の年にあんなふうに降格するとしたら、きっとものすごくたくさんの間違いをしでかしたにちがいないんだ。僕たちの誰一人として、失敗を犯さなかったと言える者はいないんだよ。

――完全に間違った方向に進んでいるとあなた自身が感じたのはいつのことですか?

最初の5節が終わった後に勝ち点がたったの2しかなかった時点で、僕たちベテラン選手にはわかっていたよ。もはやいいシーズンにはなりようがないし、最後まで残留を懸けて戦う羽目になるだろうってことがね。ひとつは、その先ずっとこの遅れを取り戻そうと懸命にならなければならないだろうし、もうひとつは、“トップ6チーム”という言葉、VfBが当然そこに入ると期待されている言葉がいつまでもつきまとっていたからだ。確かに僕たちは7位になった。けれど、2部リーグを離れてからたった2年しか経っていなかったんだ。にもかかわらずそういう途方もない期待が、それと一緒に途方もないプレッシャーも、急速に形作られることになった。それにあの頃僕たちのチームにいた若手選手は大金と引き換えに外国からやって来て、まったく違った展開を予想していたんだ。そういう若手にとってはまさに厳しい状況だったことを忘れるわけにはいかない。僕は、いつか(21歳の)ニコラス・ゴンサレスが好調なチームで自信を持ってプレーしている姿を見ることができればいいと思っている。ひょっとしたら今シーズンにも実現するかもしれないけれど、そうなれば、彼が自分の才能を証明して見せる必要に迫られることも明らかだ。

――VfBでは、そもそも重要なことは何なのかを、一人ひとりの選手が本当に理解していなかったという意見が何度も聞かれました。そんなチームの中で、個人的にもVfBと深い関わりを持つベテラン選手のあなたが何らかの影響を及ぼそうと努めても、それが実を結ばなかったということですか?

もちろん、32歳という年齢を迎えてすでに多くの経験を積んでいる者が口にする言葉は、他の者の言葉とは違った重みを持っている。けれど、チームの中で起こることの中には、そういう言葉では変えられないこともあるんだ。そんな時にはどうしようもないんだよ。それに、そもそも何の手出しもできない構造的な問題もある。選手は1個の小さな歯車にすぎない。何と言っても、その影響力は限られたものなんだ。

■ベルギーには「ポジティブな驚きを感じている」

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――あなたの新しいクラブのことをお聞きします。あなたがオイペンへ移籍することになって驚きましたが、あなたはオイペンの打診に驚きましたか?

僕の兄弟が「ベルギーから素晴らしい話が来ている」と言ってきて、初めてオイペンの名前を聞いた時の僕のリアクションはこうだった。「そうかい、そんな名前は今まで聞いたことがないな(笑)」。僕のところには他にもいくつかオファーが来ていたから、ベルギーへ行くことについて妻と一緒に何日間もさんざん考えたよ。けれど何度も積極的なアプローチを受けているうちに、日に日にいい感じを受けるようになったんだ。これこそ僕がやりたいと思っていることだとすぐにはっきりしたんだよ。

――アスパイア財団を通じてカタールと結びついていることで二の足を踏むことはありませんでしたか

僕にとって重要だったのは、新しいリーグに入って新しいフットボール文化に触れられるということ、僕に対する評価、3年という契約期間だった。非常に多くのことが僕の希望にぴったりだったんだ。おまけに若手の多いダイナミックなクラブで、魅力的な監督がいて、非常に心そそられるコンセプトを掲げている。僕は自分の経験から、このコンセプトが大事だと思っているんだ。そういうことが僕には重要だった。もちろん財政上のバックについては知っているけれど、この場合も僕は初めからいろいろなポジティブな面に目を向けていた。もしかしたら以前ホッフェンハイムにいた頃もそうだったかもしれない。僕はホッフェンハイムでも、いろいろと自分と似たところや共通する部分を見つけていたんだ。僕はアスパイア・アカデミーのいろいろな事業を素晴らしいと思っている。特にタレント育成の分野やスカウティングのネットワークについてたくさんの話を聞かせてもらったよ。2022年のワールドカップをにらんでいくつかのプロジェクトが始まっていて、カタールがアジアカップで優勝したことにその成果が現れている。そのチームではオイペンの選手たちも活躍していたんだ。

――詳しくお話を聞いていくと、実際あなたにとってはベルギーへの移籍が正解だったと思えます。あなたは以前トルコで心に残る時間を過ごしましたが(2015~17年までベシクタシュに所属)、今度はまたまったく違う新しい冒険が始まりますね。

その通りだ。僕はもう一度ブンデスリーガのチームと契約を結ぶこともできただろうけれど、何が自分にとって重要かということが問題だったんだ。ブンデスリーガでの試合数が290だろうと320になろうと、それは僕にとってたいした意味を持つことじゃない。僕はもう一度、快適な環境から抜け出して広い世界を覗きたいんだ。フットボールの面で成果を収められるか、それとも全体的に厳しい状況になるか、どちらになるのかはわからない。どちらも起こりうることだ。それでも僕を知る者なら誰でも、僕はいつでも新しいチャレンジを心から歓迎する人間だということを知っている。確かに、次々といろいろな問題に遭遇することになるだろう。もうすぐ僕には2番目の子供が生まれるから、プライベートな面でもね。けれど、そういう経験は人を生き生きさせてくれるものでもある。これからの3年間がきっとまた僕を成長させてくれると信じている。僕は全力を挙げて取り組むよ。

――新たなモードに対してもですか?

新たなモードに対してもね(笑)。ベルギーのリーグ戦やプレーオフはどんななのか、考えるとわくわくするよ。シーズンが終われば答えを出すことができるね。 ――3つの国の国境が接する地域(オイペンはドイツ、ベルギー、オランダの国境が接する付近に位置する)での生活を満喫していますか? 僕はまだ今のところアーヘンのホテルで暮らしているけれど、朝はドイツで目覚めて、ベルギーでトレーニングをして、その後オランダ南部の一番外側にあるマーストリヒトへも行った日もあったよ。オイペンは本当にきれいな町だ。確かに3つの国の国境近くで暮らすという独特の魅力があるよ。何もかもとても牧歌的だ。小さいけれど美しい街があり、トレーニングセンターはトップクラスだ。けれど、クラブの方はまだ何段階か登っていく必要がある。それが僕たちの課題だ。 ――新しいチームのクオリティはどうですか? クラブのレベルには非常にポジティブな意味で驚いているよ。チームには素晴らしい若手選手が何人もいるし、やる気があってすでに成果を実証済みの監督がいるんだ。

■古巣復帰の条件

KAS Eupen manager San JoseGetty Images

――ベニャト・サン・ホセ(オイペンの監督)はまだやっと39歳ですが、これまですでにサウジアラビア、チリ、ボリビア、ドバイで経験を積んでいますね。

彼は非常に素晴らしい人物だ。フットボールに関してスペイン的メンタリティを持つスペイン人が、まだ40歳にもならないのにそういった国々で仕事をして成功を収めてきたというのは、何がしかの意味があることだと思うんだ。彼は立派な人物で、自分がやりたいことをよくわかっている。彼は、必要な老練さを身につけたベテラン選手が試合に出ることを望んでいるけれど、同時にクリエイティブな能力も非常にたくさん求めるんだ。オイペンの試合には荒っぽいところもあるけれど、正しいバランスを維持することができるなら、それはいいことだ。テストマッチの結果を無条件に信用するわけにはいかないけれど、たとえばオイペンは4-3でレヴァークーゼンを下したんだよ(※7月13日に対戦)。僕たちはクラブが始まって以来最高のシーズンにしようと思っている。つまり、何とかトップ10に入ろうと思っているんだよ。簡単ではないだろうけど、十分実現可能なことだ。

――あなたはオイペンと3年の契約を結びましたが、それで終わりにするつもりですか?

それはわからない。僕はこれまでキャリアを積んできて、今は一つ一つの練習を楽しみ、一つ一つの試合を楽しむ段階にいる。それが今の僕にとって何より重要なことだ。僕のモーターがこの先どれだけ使い物になるかはわからない。あとどのくらいモチベーションが続くのか。それ次第だよ。けれどもっと長く続けていくことだってあるかもしれない。キャリアを終えた後に何をしたいかもまだわからない。フットボールの世界に残り続けるだろうとは思っているけれど、今はまだ選手として過ごす時間のすべてを楽しんでいるよ。悩みだって楽しんでいるんだ。肉体的、精神的に限界にぶつかっている僕はプロのフットボーラーとして悩んでいるけれど、実際それもまた楽しいと思っているよ(笑)。

――VfBはすでに、あなたが戻って来れるよう扉を開けて待っていますね。

その意思表示はうれしく思っている。けれど、いつか何らかのポストでVfBへ戻るかもしれないとしても、いずれにせよその前に、まず僕はそれに必要な能力を身につける必要がある。僕は、ひょっとしたら功績を認められているのかもしれないという理由だけでは、ポストを手に入れたいとは思わない。そういう場合にはまず生徒の立場に戻って必要な専門知識を身につけ、何年かかけて自分の力を証明しなければならない。提供されるポストが監督であろうと、マネージャーであろうと、違う役割であろうとね。 

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

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