ヴィッセル神戸の組織的なディフェンスに貢献するトーマス・フェルマーレン。対人はもちろん戦術面での貢献ははかり知れない。アヤックス、アーセナル、バルセロナでもプレーした実績を持つ34歳の現役ベルギー代表DFを直撃したロングインタビューの後編は、過去所属したビッグクラブでの経験、そして神戸での今とこれからについて。【聞き手=小野慶太/写真=齊藤友也】●日本とJリーグについて語った前編はこちら●
■ヴェンゲルは若手育成に長けていた
©Getty Images▲2014年、ウェンブリー。アーセナル時代にFA杯を掲げる。左からポドルスキ、アルテタ(現マンチェスターシティコーチ)、フェルマーレン、ヴェンゲル監督
――アーセナル時代の終盤やバルセロナ時代は、ケガに苦しんだ時期もありました。しかし、34歳の今でもトップコンディションを維持されています。ケガとの向き合い方、それを踏まえてトップコンディションを持続させる秘訣を教えてください。
確かにケガに悩まされた時期はありました。その克服には、現状を受け入れてケガと向き合っていくしかありません。自分の中では、コンディションの良いときは自分がプレーしているチームに貢献できるサッカーができる自負があったので、その思いに頼って、ケガを治すことに集中していました。
――今もアーセナルの試合はご覧になりますか?
はい、もちろん。時差で難しいところもあるんですが(笑)。見られるときは見るようにしています。
――低迷するアーセナルのチーム状況をどのように感じていますか?
今はちょっと難しい状況だなと感じています。結果がなかなか出せていない、勝ち点を取れていないところもありますが、自分もプレミアリーグでプレーしていましたから難しさは知っています。例えば18位のチームのアウェイで戦ったとしても、本当にしっかり戦わないと勝ち点を取れないようなリーグなので。ただ一瞬で状況が変わるリーグでもあるので、今後を見守りたいと思っています。
©Tomoya Saito――フェルマーレン選手が所属した当時は、アーセン・ヴェンゲル監督が率いていました。ヴェンゲル監督を選手たちは「お父さん」と呼んでいるそうですが、実際に選手とどのようなコミュニケーション手法を取られていたのでしょうか?
多くの人が、彼を父のような存在と慕うところは理解できます。多くの選手にとって、彼がいたころのアーセナルは、無名だけど実力のある若い選手を連れてきて、彼らを育てることをよくやっていましたし、そういう意味で目の利く監督だったと思います。
やはり若い無名の選手からすると、プレミアリーグのビッグクラブという舞台でプレーさせてもらう、環境をもらえることはすごく大事なことです。もちろん、自分にとってもすごく大事なことでした。多くの選手が彼を父のような存在というのは、そういうところがあるんじゃないかと思います。
――アーセナル時代にはキャプテンも務めています。ビッグクラブでキャプテンを務めることの難しさ、心掛けるべきこととは?
自分としては特別なことは何もした覚えはなくて、ありのままの自分でいるよう心掛けました。当時も「なぜキャプテンに抜擢されたのか?」という同じような質問を受けたんですけど、何か特別なことはしていません。おそらく監督が自分のプレーだったり、自分の振る舞いを見て、選んでくれたと思うし、自分は今まで通りやるようにしました。
もちろん、いきなりキャプテンになったというわけではなく、最初はまず副キャプテンでしたから。ファン・ペルシーがキャプテンで、彼がいなくなってからキャプテンになりました。自分の中では成長する機会というのもあり、それも助けにはなりましたが、本当にありのままの自分でいることを心掛けていましたね。
■メッシはDFの自分を成長させてくれた
©Getty Images――アーセナルからバルセロナに移籍し、指導を受けたのはルイス・エンリケ監督、エルネスト・バルベルデ監督です。それぞれの特徴をどう捉えていますか?
性格という部分ではかなり違った監督だと思います。バルベルデ監督はすごく静かな監督なんですが、ルイス・エンリケ監督はものすごくエモーショナル…より感情を示す監督だったなという印象ですね。戦術に関しては、バルサというチームなので似ています。どういうプレーをしたいか、プレーの思想、ポゼッションといった練習の中で求めることは一緒でした。そこはあまり変わらないけれど、性格は異なる監督でしたね。
――バルセロナでは、レオネル・メッシ選手とチームメートでした。彼と一緒にプレーすることの意味を教えてください。
私に限らず、バルサに行った選手にとってはすごい経験だったと思います。もちろんチームメートなんですけど、彼はスーパースターで、素晴らしい選手なので、驚くようなプレーを練習中も試合中も見せてくれるんです。
私は5年いましたが、5年経った後でも練習中に驚かせられることもたくさんありました。練習での対人プレーは、ディフェンスとしても難しかったです。自分をディフェンダーとして成長させてくれたと思います。彼のような歴代でもトップの選手と同じチームメートでいたことは光栄です。
■そして神戸で。今は天皇杯を獲る
©J.LEAGUE――アンドレス・イニエスタ選手とはバルセロナでも一緒にプレーしました。バルセロナ時代と神戸に移籍してから、何か違いを感じることはありますか?
そこまで変化はないと思います。ロッカールームでもそうですし、ピッチの上でも彼のスタイルは変わっていないですし、ボールを扱うところ、テクニックだったり、味方をGKと1対1にしてくれるようなキラーパスを出せるプレースタイルは変わらずに今も昔も続けている印象ですね。
――フェルマーレン選手をはじめ、イニエスタ選手、ポドルスキ選手らは経験値の高い選手。日本のサッカーに何をもたらすことができると感じていますか?
経験をここにもたらす、経験を通して日本に貢献できればと思っています。自分たちはもちろん若くはないんですが、ヨーロッパで長年積んできた経験があります。
例えばイニエスタ選手だったら、ボールを使ったクオリティーで貢献していると思いますし、自分で言えば、ディフェンスをしっかり組織してプレーすることに関して何かをもたらしたいと思っています。ポドルスキ選手ももちろん彼の経験からもたらせることがあると思います。
――それでは神戸でフェルマーレン選手が成し遂げたいことを教えてください。
ショートタイム、直近で見ると天皇杯がありますので、そこで勝つことは一つの目標です。もちろん、リーグ戦でもチームとしてはもっと上位にいたかったんですけど、あまり今シーズンは実力を発揮できなかった。ここ最近は勝てているのは良いサインではあると思います。もちろんクラブとして大きな目標を掲げているので、来シーズン以降、リーグでもより上位に食い込めるように自分たちとしてもその覚悟をもって挑んでいきたいと思っています。
――ご自身のキャリアにおいて、今後の具体的なイメージは?
自分としては2年半の契約を結んでここに来たので、それより先は見ていないです。それが終わるのが36歳というのもありますけど、今はこの場にいる。このクラブで自分が出せるだけのことに貢献したい気持ちですね。
【インタビュー前編:日本そしてJリーグは こちら 】
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です