3月9日(火)夜、イタリア共和国のジュゼッペ・コンテ首相はローマの首相官邸で会見を開き、前日早朝に北イタリアの一部地域(ロンバルディア州全域と周辺4州の一部)を対象に発布した、コロナウイルス感染拡大防止のための緊急対策首相令を、イタリア全域に拡大することを発表した。
4月3日までを当面の期限として、仕事および健康上の理由を除く不要不急の移動禁止(自治体の境界を超えて移動する場合は理由を明記した許可証が必要)、飲食店などの営業時間短縮(8時から18時まで)、人が集まるイベント・集会などの全面禁止といった、かなり踏み込んだ感染対策が盛り込まれているこの首相令、8日に発布された時点では、プロスポーツに関しては無観客を条件として開催が容認されていた。
しかし首相は9日の会見で「スポーツイベントだけをあえて継続する理由は残されていない。プロサッカーのリーグ戦を含む全てのスポーツイベントも中断の対象となる」と明言。これによって少なくとも4月3日までの間、セリエAの開催停止が確定となった。
イタリア北部での感染拡大に対応し、政府が一部地域で学校の休校やイベントの中止などを命じる最初の政令を出した2月23日以来、イタリアサッカー界ではセリエAの開催をめぐって論争が巻き起こり、開催か延期か、観客を入れるか入れないかについて、イタリアサッカー連盟(FIGC)とリーグ主催団体であるレーガ・セリエAの判断が二転、三転するなど、大きな混乱が続いてきた。
その混乱の象徴となったのが、本来なら3月1日に開催されるはずだった第26節、ユヴェントス対インテルの「イタリアダービー」。最終的には先週末の8日に無観客で開催され、ユヴェントスが2-0で勝利してセリエA首位の座を保ったわけだが、そこに至るまでの紆余曲折には、今回のコロナウイルス問題に対するサッカー界の優柔不断、そして危機意識の甘さが如実に表れていた。
■急速な勢いで感染が拡大
2月23日の政令を受け、一度は無観客での開催を決定したレーガ・セリエAだったが、「世界に向けたプロダクトであるセリエAのイメージダウンを怖れて」(『ラ・レプブリカ』紙の報道より)、このカードだけでも何とかして通常開催しようと目論んだ末、政令対象地域で開催される6試合だけを、観客を入れた通常開催が可能な5月13日に延期するという、一貫性に欠ける強引な解決策の決定に踏み切った。
しかしこれに対して、一部の政治家、世論、マスコミからも強い反論が巻き起こると、それに押される形で再び日程変更を協議、最終的にはこの6試合を先週末に開催し、それ以降の全日程を1週間ずつ後ろにずらすという解決策が取られた。
この一連の経緯に対して、二転、三転する決定に振り回される形で被害者となったインテルのスティーブン・チャン(張康陽)会長が、インスタグラムの個人アカウントを使い、リーガ・セリエAのパオロ・ダル・ピーノ会長を名指しで「人々の健康を二の次にして日程を玩ぶ、私が知る中でも最低の腹黒いピエロ」と痛烈に批判したことも、この混乱とそれが引き起こす騒動に対し、火に油を注ぐ結果となった。
しかし、その間にもイタリア国内における感染拡大の状況は急速に深刻化。2月後半は1日200人前後の増加で推移していた感染者数が、3月に入ると500人前後に増加、3月7日以降の3日間は1000人単位へとさらに増えて、3月9日現在で累計感染者9172人、死者463人となった。
政府が首相令による感染拡大措置をイタリア全土に拡大するという強い措置に踏み切ったのは、これ以上感染が拡大すると、医療体制そのものが発症した患者への対応に追いつかなくなる可能性が高くなると予想されているため(現在でも一部の病院では、高齢者よりも若者への医療措置を優先せざるを得なくなっていると伝えられる)。どう見てももはや「カルチョどころではない」状況である。
とはいえつい2、3日前までは、イタリア国内でもセリエAの中断に対して批判的な意見が少なくなかった。選手や関係者の健康を優先すべきだとして、先週末の無観客試合開催中止を強く主張したプロサッカー選手協会のダミアーノ・トンマージ会長に対しては、SNS上で「一般人は仕事に出かけなければならないのにどうしてサッカー選手だけ守られなければならないのか」といった反論が(実際にはもっと汚い言葉を使って)山のように投げつけられたほどだった。しかしそうした批判も、政府の命令によって試合開催そのものが不可能になった現在は、まったく意味をなさなくなった。
ではこの中断はセリエA、そして欧州サッカーの今後にどのような影響をもたらすのだろうか。
■シーズン終了も
4月3日までの中断によって、今週末開催予定だった第27節、および来週末の第28節は延期が確定している。しかし、今年は6月12日からEURO2020(欧州選手権)が開催されるため、欧州各国のリーグ戦は5月24日までに全日程を終えなければならない。セリエAのカレンダーはすでに満杯になっており、延期された2節分をはめ込む余地は残っていないという状況だ。
現時点における選択肢は以下の3つ。
1).UEFAがEURO2020の開催を2週間延期するか、あるいは2021年に先送りすることで、国内リーグの日程消化を優先する
2).現在準決勝、決勝が残っているコッパ・イタリアの日程を先送りし、そこに延期分を「ねじ込む」ことで、セリエAだけでも全日程を消化する
3).全日程消化は不可能と判断して、現時点をもって2019-20シーズンのセリエA終了とする
FIGCは3月10日、ビデオカンファレンスによる理事会を開催し、上記を含めた今後の対応について検討する。しかしこの日程問題は、国内リーグだけでなくCL、EL、さらには代表マッチであるEURO2020までが関連してくるため、欧州サッカーの統括団体であるUEFAの判断なしでは、最終的な結論は出しようがない状況だ。
今週と来週のミッドウィークに行われるCLとELのラウンド16が、一部無観客になるものの開催予定(※ELバーゼルvsフランクフルトはスイス司法安全保障省が中止と発表。国外開催など代替案が検討されている)となっていることが示す通り、UEFAは現時点では欧州カップ戦についてもEURO2020についても、日程変更などの対応を取ろうという動きは(少なくとも表面上は)見せていない。
とはいえ、ウイルスに国境はない以上、コロナウイルスの感染拡大はイタリアだけに限った話ではなく、遠からずヨーロッパ全体で問題化することは不可避と見られる。すでにフランス、ドイツ、スペインでもCL、ELの一部試合が無観客開催になっているなど、今後の感染拡大状況によっては、ヨーロッパ各国で日程消化に関する問題が持ち上がる可能性もある。
CL、ELも含めて、欧州サッカーの19-20シーズンがどのような結末を迎えるかは、ピッチ上ではなくピッチ外、コロナウィルス次第ということになってきている。確かなのは、これはもはやイタリア一国ではなくヨーロッパ全体、スポーツではなく公衆衛生上の問題だと考えるべきだということ。引き続き事態の推移を見守ろう。
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