■トッテナム、57年ぶりに欧州ベスト4
今シーズンが始まった頃、誰がこの準決勝カードを予想できただろうか――。トッテナム対アヤックス。並み居る強豪を抑えてここまで勝ち上がってきたこの両チームのどちらかが、今シーズンはチャンピオンズリーグ(CL)のファイナルへと進出することになる。
グループステージではバルセロナ、インテル、PSVと同居した“死の組”を2位でくぐり抜け、ラウンド16でドルトムントを鮮やかに下し(2戦合計4-0)、準々決勝ではマンチェスター・シティとの激闘の末、4-4のアウェーゴール差という紙一重の戦いを制して勝ち上がったトッテナムにとっては、CLでの4強進出はクラブ史上初めての出来事だ。
マウリシオ・ポチェッティーノ監督はマン・C戦後、「この夜は、フットボール界と、私の監督キャリアにおいて最も重要な瞬間のひとつだ」と話したが、前進の欧州チャンピオンズカップ時代を含めても、トッテナムが欧州最高峰の舞台で4強に残ったのはこの舞台のデビューシーズンだった57年前、1961-62シーズンの準決勝でベンフィカに2試合トータル3-4で破れた時の一度きり。クラブにとってはまさに快挙で、イングランド勢から新たなCLベスト4入りのクラブが登場したという意味でも、「フットボール界にとって重要な瞬間」という言葉は十分に頷ける。
奇しくも今季は、118年間もホームとしていたホワイト・ハート・レーンから新スタジアムへと本拠地を移した記念すべき年でもあり、トッテナムにとっては文字通り歴史の1ページに深く刻まれるシーズンになろうとしている。
■スパーズを蝕む「ストレスと疲労」
(C)Getty Imagesただ、準決勝のアヤックス戦も決して一筋縄ではいかないだろう。最大の不安要素は、スパーズの“足”が止まりつつあることだ。ドルトムントを3-0で破ったCLラウンド16の第1戦以降、意気揚がる欧州での戦いに反して、プレミアリーグでの成績は10試合で3勝1分け6敗と振るわない。直近の4月27日に行われた第36節ウェストハム戦では0-1で敗れ、新本拠地初の敗戦を喫した。試合後、ポチェッティーノ監督は「ストレスと疲労があった。ベストでない状況で戦った」とコメント。この「ストレスと疲労」の問題はなかなか根深い。
CL準々決勝でマン・Cに勝って以降は特に疲労が色濃く、4月20日にはプレミア第35節でマン・Cと再戦するもCLのような躍動感はなくアウェーで0-1と敗戦。その3日後には残留争いに苦しむブライトンと対戦したが、こちらも80%近い支配率でボールを握りながらも最後の崩しに手間取り、終了間際にクリスティアン・エリクセンが決めたゴールで1-0の辛勝がやっとだった。そしてウェストハム戦では、特に後半になるとボールロストが目立つようになり、ハマーズのカウンターに苦しめられることになった。
そのウェストハム戦から中2日でCL準決勝に臨むスパーズに対し、アヤックスは中6日と休養たっぷりでこの試合に挑んでくる。というのも、オランダではエールディヴィジがアヤックスをサポートするためにリーグ戦の日程を調整し、4月28日に行われるはずだった試合を延期したのだ。とりわけどのチームも満身創痍のシーズン終盤にこの差は大きい。アドバンテージは、明らかにアヤックスにある。
■“即時奪回プレス”合戦を制するのはどっちだ?
ProShotsだが、どんなに疲れていようと、トッテナムは持ち前の走力とプレッシングを最大限に発揮できなければ、アヤックスに勝つのは難しい。今のアヤックスは、分類で言えばバルセロナやマン・Cに近いプレーをする。2013年~15年までバイエルンのリザーブチームで監督を務めていたエリク・テン・ハーグ監督は、当時トップの監督だったペップ・グアルディオラのエッセンスを存分に学んでいる。それ故、ボールポゼッションを大事にすること、後方から丁寧にビルドアップしてくることもそうだが、彼のチームは攻守の切り替えが異常に速く、ボールを失った後の“即時奪回プレス”の威力が高いのだ。
スパーズとしては、準々決勝マン・C戦のファーストレグのように連動した前からのプレッシングでアヤックスの組み立てを妨害し、逆にカウンタープレスをハメにいかなければいけない。特にアンカーに入るフレンキー・デ・ヨングに自由を与えると、ここから効果的な縦パスや、パスワークにリズムが生まれたりと厄介だ。ムサ・シソコにハリー・ウィンクスと故障者が多く出ているスパーズの中盤だが、ここでのプレッシングとビルドアップのせめぎ合いを制することができるかが、試合のカギとなりそうだ。実際、ユヴェントスとの準々決勝セカンドレグを思い返しても、ユーヴェのハイプレスがよく効いていた前半は互角の展開だった。後半、プレスが緩んだところでアヤックスがパスワークでそれらをかいくぐるようになったが、スパーズは90分間集中を保ち、プレッシングを続けていく必要がある。
また、デ・ヨングと同様に注意すべきはデュサン・タディッチだろう。サウサンプトンでプレーしていた頃にスパーズ守備陣は何度も対戦しているが、アヤックスに来てからの彼は別人と考えた方がいい。1トップの位置を出発点にして“偽9番”として振る舞う今の彼は、リヴァプールのロベルト・フィルミーノのような役目を担う。彼が作ったスペースを使ったり、彼とのワンツーから、両ウイングのハキム・ツィエクやダヴィド・ネレス、中盤のドニー・ファン・デ・ベークといった選手がゴール前に飛び出してくる。
トッテナムは、おそらくエリック・ダイアーとヴィクター・ワニャマが組むであろう中盤センターと、元アヤックスのトビー・アルデルヴァイレルト、ヤン・ヴェルトンゲンのセンターバックコンビが連携し、常にタディッチの動向に目を光らせておかなければいけない。
■ケイン、ソンの“飛車角落ち”でもゴールを狙うには?
Getty Images中盤のプレッシング合戦と同様に、スパーズにとって特にホームでの第1戦で大きな問題になりそうなのが「ゴール」だ。故障離脱中のハリー・ケインに加えて、ファーストレグは累積警告でソン・フンミンも欠場することになる。今季ここまで、ケイン欠場時にその穴を埋めてきたソン・フンミンも失って“飛車角落ち”のスパーズが得点を奪うには2つのポイントを押さえておく必要がある。それは「セットプレー」と「相手サイドバックの裏」だ。
ユーヴェとの準々決勝第2戦でもクリスティアーノ・ロナウドにヘッドを叩き込まれたように、アヤックスはセットプレーの守備がやや雑で、マークのズレが散見される。その点では、ケインとソンに代わって先発が予想される巨漢FWフェルナンド・ジョレンテはマン・C戦でもセットプレーからゴールを決めており、期待が持てるかもしれない。
また、今季のアヤックスが攻撃を受けるシーンで目立つのが、組み立てや崩しに参加するため基本的に前目に位置している両SBの裏のスペースを突かれるパターンだ。スパーズはエリクセンやデレ・アリをダニー・ローズ、キーラン・トリッピアーの両SBが追い越していき、速いクロスを送り込む攻撃に活路を見出したい。
リーグでのトップ4争いも熾烈を極める中、疲労困憊のトッテナムだが、クラブ史上初のファイナル進出という歴史を作るには、今回はまたとないチャンス。ポチェッティーノと仲間たちは、いかにしてこの難局を乗り越えるのだろうか。
文=寺沢薫
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です