2019-02-07 Yoshinori Muto

決定的だったアジア杯離脱…序列低下でも、武藤嘉紀は前を向く「厳しい状況は何度も乗り越えてきた」

FW武藤嘉紀はその日、ベンチに座ったまま試合終了のホイッスルを聞いた。

3月2日に行われたプレミアリーグ第29節、ウェストハム対ニューカッスル。ロンドン・スタジアムでニューカッスルが0-2と敗れた試合で、ベンチには2カ月ぶりに武藤の姿があった。しかし、最後までラファエル・ベニテス監督から声がかかることはなかった。

これで武藤は、日本代表として参加したアジア・カップ2019から復帰以降、4戦連続で出番がない。合流後最初の3試合はメンバー18人にも入れなかっただけに、今回のウェストハム戦で一歩前進したとも言える。だが、厳しい状況に置かれていることに変わりはない。

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苦戦の主因は、やはりアジア杯だろう。

武藤は11月上旬に左ふくらはぎを負傷し、約1カ月戦線を離脱した。このケガで序列が低下。12月5日のエヴァートン戦でメンバーに復帰したものの、その後はベンチ温める状況が続き、チーム内での存在感は薄れていった。アジア杯を戦う日本代表に合流したのは、ちょうどこのタイミングだ。途中出場した1月2日のマンチェスター・U戦(第21節、0-2)を最後にニューカッスルを出発し、決勝まで約1カ月間チームを離れた。

つまり、アジア杯前から存在感が薄れ始め、大会への参加で序列低下が決定的になった。そう言って差し支えないだろう。しかもクラブは、今冬の市場で史上最高額となる移籍金2000万ポンド(約30億円)でパラグアイ代表MFミゲル・アルミロンを獲得。前線の駒数が1つ増えたことで、メンバー入りすらままならない状況となった。

■決定的だったアジア杯離脱。ニューカッスルの好調とシステム変更

2019-03-04-almiron-perez

武藤自身、現在は厳しい状況にあることを認めている。

「きついですね。(吉田)麻也君とアジア杯の時にも話したけど、自分がいなかった1カ月間というのは、チームが一番固まる時期。そこでチームの結果が良かったら、帰ってきたときにポジション争いが相当きついことになると。そう前々から言われていましたけど、それでも戻ってきたらもう一回取り返せる自信があった。でも、やっぱり思ったより難しかった」

武藤が離れている間、ニューカッスルは2勝2敗で勝ち点を積み上げ、降格圏を脱出。しかも、現在リーグ首位のマンチェスター・シティを撃破するというサプライズも起こした(第24節、2-1)。ニューカッスルの調子が上向いてきたタイミングで復帰したことになる。

日本代表FWは言葉を続ける。

「そうなると、今のメンバーを変える理由がない。1カ月いなかった選手が帰ってきて、パッと出られるわけでもない。だから、すごく厳しい。この状況を打破するには、まず練習から100%でやらないといけない。そこは見せることができていると思うけど、やっぱり試合に出ないかぎり、どうしようもないんで。アピールができない」

状況をさらに複雑にしているのが、ニューカッスルのシステム変更だ。ベニテス監督が採用する現フォーメーションに、武藤の特性を生かせるポジションはない。

シーズン序盤のニューカッスルは、4-4-2と4-2-3-1を併用した。その中で武藤は2トップやトップ下としてプレー。攻撃色の強い武藤の持ち味を生かせるポジションで、徐々に出場時間を延ばしていた。

ところが、チームの成績が一向に上がらないため、ベニテス監督は重心を後方に置いた手堅い戦術へと舵を切った。守備時は5バックに変形する3-4-2-1システムを採用し、攻撃はクロスやロングボールを主体とするよりダイナミックな展開へと変更した。

現在、最前線には189cmの大型FWサロモン・ロンドンが君臨する。長身をいかしてロングボールを収めることに長けたターゲットマンの存在により、「攻守のバランス感覚」と「ゲーム構成力」が求められる攻撃的MFの位置には、アルミロンとアジョセ・ペレスがスタメン起用されることとなった。高さを必要とされるストライカーと、中盤的の要素が多い攻撃的MF。武藤としては、自身の特性を生かせるポジションがなくなった格好だ。

「きついですね。1トップの位置はロンドンが絶対に外れないと思いますし、新しく入ったミゲル(アルミオン)もたぶん外れない。アジョセも悪くないです。(自分としては)前のサイドのポジション(3-4-2-1の「2」)ができることをアピールしないといけない」

「(その位置は)自分もできるけど、監督の構想ではトップ下かFWとして見られている。(今のシステムでは)トップ下のポジションがないから外れている、ということだと思う。とにかく、途中交代で点を取らないかぎり、状況が変わることは多分ない」

厳しい状況を端的に表しているのが、ウェストハム戦の後半途中からFWを2枚とするシステムへ変更した際にも、武藤の出番がなかったことだ。

2点を追いかける展開となり、ニューカッスルはFWの駒数を2枚に増やして攻撃のギアを上げた。2トップになれば、FWの武藤が起用される可能性はグッと高まるはずだが、それでも声はかからなかった。ロンドンと2トップのコンビを組んだのは、65分からペレス、79分からはアルミロンだった。指揮官の信頼を勝ち取っていれば武藤を起用する絶好のタイミングであったが、投入されることはなかったのだ。

■それでも、前を向く

2019-02-07 Yoshinori Muto

それでも、武藤は「とにかく粘り強くやる」と前向きに言い切る。

地元紙イブニング・クロニクルに「語学力が弊害になっている」と指摘されたこともあったが、この件についても「『まだ理解できていない』とか『英語ができないから』とか、色々言われているところもある。そういう言い訳さえ作られないように、英語も勉強しないといけないし、(実際に)やっています。とにかく1つひとつ、足りないところをつぶしていって、あとはピッチで示すだけかなと思います」と力を込めて語った。

下を向くことなく、前向きに――。そう信じる根底には、ドイツのマインツ在籍時代に度重なる負傷に悩まされながらも、その壁を乗り越えてきた強い自負があるという。

「来るべきチャンスのために、とにかく体を追い込んで、良いコンディションを維持しないといけない。ドイツでもケガを抱えたことがあったけど、こういう厳しい状況を何度も乗り越えて(ポジションを)取り返してきたので。心折れずにやっていきいたい」

今季のプレミアリーグも残り9試合。厳しい状況に追い込まれた武藤だが、その不屈の精神で苦境を打破することは出来るのだろうか。

取材・文=田嶋コウスケ(サッカーライター)

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