生まれは福岡県北九州市。地元小倉南FCを経てサガン鳥栖U-18に加入、2020年にトップ昇格した。20歳の若きレフティは今、鳥栖の左サイドで積極果敢なプレーを見せている。DAZNとサッカーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」の月間表彰で、Goalは7月の「ベストヤングプレーヤー」にサガン鳥栖のDF大畑歩夢を選出した。(インタビュー日:8月12日/聞き手:吉村美千代)
■スタメンで出るために
――現在、3バックの左CBでポジションをつかんでいます。ここまでの手応えを教えてください。
シーズン序盤、自分はベンチやベンチ外でした。悔しい始まりだったのですが、そこで負けずに練習して努力して、こうやってスタメンで出られています。徐々に自信というものもついてきたと思います。
――5月30日のJ1第17節・ヴィッセル神戸戦から先発出場を続けています(8月14日現在リーグ戦7試合連続先発)。7月24日の第22節・セレッソ大阪戦では、小屋松知哉選手のゴールをアシスト。相手のクリアミスを拾ってすかさず前にパスを出す、というプレーでした。
いや、あれ、パスじゃないんです(笑)。シュートを狙ったんです。ふかさずになるべくファーサイドを狙うようにしたら、いいところにこぼれたっていう感じですね。
――狙ったパスだと思いました、失礼いたしました。でもボールを持てば前へという良いシーンだったと思います。今回、お話をおうかがいするにあたり、5月のカップ戦後のコメントを読みました。当時は「リーグ戦で出ている選手と違いがある」とおっしゃっていたんですね。ご自身、何かのきっかけがあってその違いを埋められたんでしょうか?
やっぱり練習で、試合に出ている選手に話を聞いたことだと思います。トレーニングから合わせていくなかで、自分自身いろいろ教わりながらやった部分があって。徐々に慣れてきたという印象です。
――どの選手にお話を聞かれていたんですか?
仙頭(啓矢)選手ですね。仲良くしてもらっていて結構聞いていました。
――関西の人だから、話が聞きやすくて面白い?
面白くはないですね(笑)。優しいです。
――優しくてプレーでも息が合っているんですね。
左サイドでいつも一緒にプレーしているので。仙頭選手にボールを出すタイミングは、序盤に比べたら、息が合ってきたというのはあります。
――前線にいる仙頭選手が「こう動くからここにちょうだい」といったことを?
はい、そうです。
――似た質問かもしれないのですが、一番助けられている選手はどなたですか?
(GKの)朴一圭選手ですね。一番後ろからのコーチングだったり、背後のケア、シュートストップという場面でいつもチーム全員が助けられていると思います。
――ご自身の特長は前に出るところですか?
そうなんですが、やはり守備のポジションなので、まずは守備で1対1で負けないこと。プラスαで、攻撃で前に出ていくスピードや最後の質の部分というところもありますね。
■ユース時代に得た財産
(C)Hiroto Taniyama――大畑選手は福岡県北九州市のご出身で、小倉南FCジュニア、ジュニアユースを経て鳥栖に加入されています。サッカーを始められた理由を教えてください。
小学3年生の終わりくらいに、仲のいい友達が「サッカーやりたい」って何人かバババってクラブチーム(小倉南FC)に入ったんです。親からも「スポーツは何かしたほうがいいよ」と言われてずっと迷っていたんですけど、友達から「一緒に行こうよ」って言われて。だから最初はそんなにサッカーが好き、とかはなくて「何かスポーツやったほうがいいかな」というくらいの感覚でした。そうしたらだんだん面白くなって、休みの日でも公園で友達とボールを蹴って。ずっとサッカーをやっていました。
――その頃影響を受けた選手はいますか?
小学校の時はそんなにです。ワールドカップをテレビで見たり、本田圭佑選手を見たりしていたくらいです。中学に上がって、今ガンバ(大阪)にいる福田湧矢選手(小倉南FCジュニアユースの先輩)がとにかくずば抜けてたんです。だから福田選手のプレーをすごく見ていました。
――高校生年代は北九州を離れて鳥栖のU-18へ進みます。この経緯は?
中学3年生のときに、サガン鳥栖U-15と対戦することがあったんです。その時にちょうど今の監督の金明輝さんが見に来られていて。そこで話をいただきました。小倉南FCの監督から「鳥栖から練習参加来ないか? って言われてるけどどうする?」って言われて。「行きます!」ってなりました。
――迷いはなかったですか?
最初はちょっとありましたね、正直。
――実家を離れるわけですからね。でも、行って良かったですね。
もちろん、全然良かったです。
――そうして進んだ鳥栖U-18で得た一番大きなことは?
人間的にもすごく成長できたし、サッカー面でも走るところだったり、球際の激しさだったりを植え付けられました。あと、一つひとつのプレーの質という部分は、高校からずっと意識してやってきているところです。
――その鳥栖らしさはプレーからも感じられます。左利きの左SB、左CBになりますが、昔からこのポジションだったんですか?
いや、高1の途中ぐらいからです。最初はボランチだったんです。高校1年生の途中までボランチをやっていて、突然、練習試合で左SBに入りました。(当時U-18の)金明輝監督に終わった後に、「左利きの左SBは日本でも少ないし、こっちでやっていったほうがいいんじゃないか?」と言われて。最初はボランチのほうが良かったんですけど、やっていくうちにSBも楽しいなってなりました。それがきっかけです。
――そのSBの楽しさとは?
相手が少々寄ってきても、技術ではがして前進するところとかですね。今、トップチームでやっていてもやっぱりそんなプレーができた時は気持ちがいいです。あとはアシストをもっとできたらもっと気持ち良くなると思います。
――アシスト、そしてゴールは欲しいですよね。見ているとやはり球際の強さを感じます。先日のFC東京戦ではレアンドロ選手とぶつかってボールを奪うシーンもありました。強かったですか?
今までやってきた中でも強いなと思いましたが、「自分でもいけるな」という感覚もありました。
――「うわ、強い」と感じた選手はいますか?
アビスパ(福岡)のジョン・マリ選手やガンバ大阪のパトリック選手はやっぱり体が全然違いました。
――そういう相手を前にすると逆に「やってやる!」といった気持ちに?
そこでつぶせたら面白いですよね。お客さんも見ていて面白い部分もあると思います。逆に燃えてきますね、強い選手のほうが。
――では、今の課題は?
先ほども言ったんですけど、最後のクロスの質の部分ですね。そこをもっと改善できればもっとアシストといった数字も増えていくと思います。
■目指すは海外でのプレー
(C)Goal――最後にちょっと違う話を聞かせてください。海外サッカーはご覧になりますか?
フルではあまり見ないですね。
――理想のSBはいますか?
攻撃の部分で、マルセロ選手は試合前とかに見てます。やっぱり攻撃でいろんなアイデアがあるし、ゴールも取れるし。見ていて面白いです。
――海外といえば鳥栖はアヤックスと提携していて、コロナの前は遠征されていましたよね?
自分は実は海外遠征一回も行けてないんです。同時期に本田風智選手と(2種登録で)トップチームのほうに帯同させてもらっていたので。
――上のレベルという意味ではそれも良い経験ですよね。海外でプレーしてみたいと思いますか?
はい。めちゃくちゃしたいです。
――行きたいリーグはありますか?
今はそんなパっとは出てこないですけど、海外で能力ある選手とやってみたいという思いはすごくあります。
――東京五輪はご覧になっていましたか?
はい。
――率直な感想を教えてください。
あれだけの日本代表の選手でも、例えばスペインが相手だったりしたら、プレーのスピードやコントロールひとつのところ、その差がやっぱりあるんだと感じました。
――U-24日本代表はほとんどが海外組でしたが、鳥栖からは林大地選手(シント=トロイデンに移籍)が五輪を戦われました。林選手と何か話されました?
そう長くは話せてないですね。
――刺激は受けましたか?
刺激はもちろん受けてます。
――ご自身はパリ五輪世代です。やはりあの舞台に立ってみたいと思いますか?
立ちたいです。
――そのために何が必要だと思いますか?
やっぱり試合数だったり、目に見える結果だったり。数字を残すしかないと思います。
――そういう意味で目の前の試合の話に戻ります。鳥栖は今、ACLも狙える位置にいます。残るリーグ戦の抱負を教えてください。
上位に居続けるためにも、勝ち点3は本当に大事です。8月の連戦、まずは絶対に落とせない部分もあります。そこはチーム全員で共通してやっています。
――今、試合していて楽しいですか?
楽しいです。勝った時がやっぱり気持ちいいですね。
――そうですよね。頑張ってください、応援しています!
はい、頑張ります!
■DF 31 大畑歩夢 Ayumu OHATA
2001年4月27日生まれ、20歳。168cm/63kg。福岡県北九州市出身。利き足:左。小倉南FC-サガン鳥栖U-18を経て2020年トップ昇格。球際の強さと果敢な突破が持ち味の左SB/左CB。J1通算31試合出場(8月14日時点)