Kevin Filling NXGN GFXGetty/GOAL

【NXGN】ケビン・フィリング:マンチェスター・ユナイテッドへの移籍が噂される10代の天才少年は同胞のイサクの足跡をたどるのか

フィリングのシニアでのキャリアはまさに始まったばかりだが、今夏、驚愕のデビューを果たして以降、この10代の選手の話題はすでにニュースになっている。イングランドの強豪マンチェスター・ユナイテッドなどへの移籍噂が浮上しているのだ。

INEOSは2023年末にオールド・トラッフォードでのサッカー運営権を取得して以来、最も優秀な若手選手の獲得において冷徹な姿勢を示しており、スカンジナビアの天才少年チド・オビをアーセナルから獲得し、マリ出身のMFセク・コネも手に入れた。その上さらに、他のビッグクラブも争奪戦に加わっていると言われる驚異的な才能を持つ10代選手の獲得が実現するかは未知数であり、代理人がマンチェスター・Uの名前を利用してメディアに取り上げられることで交渉を有利にしようとするのも、よくあることである。とは言え、またしてもスウェーデンのサッカー界にとてつもない才能の持ち主がいることは明らかだ。

  • すべての始まり

    両親を通じてスウェーデンとセネガルの両国の代表資格を持つフィリングは、2008年11月、スウェーデンの都市ベステルオース(首都ストックホルムから西へ約100キロ)で生まれた。サッカーのキャリアは地元ベステルオースのIKフランケで始まったが、11歳で、より大きな地元クラブである2部リーグ所属のベステルオースSKへ移籍した。興味深いことに、元マンチェスター・ユナイテッドDFヴィクトル・リンデロフもこのクラブの出身である。

    そこでフィリングはストックホルム最大のクラブであるAIKの目に留まり、2023シーズンを14歳で前に同クラブのアカデミーに加入。年齢別カテゴリーを素早く駆け上がり、U16とU17のチームで出場機会を得ると、2023年には14試合で10得点を記録。その上昇傾向は翌年も続き、U17チームの正式メンバーとして26試合で12得点を挙げた。

    2025年初頭にはU19のチームに昇格。その後、提携クラブである3部所属のエンシェーピングSKへ短期間レンタル移籍すると、わずか3試合の出場で1得点を記録した。この活躍を受け、16歳の彼は親クラブからトップチーム昇格の機会を得る準備が整っていると判断された。

  • 広告
  • Kevin Filling AIK 2025Getty

    ブレイクのきっかけ

    2025年6月下旬、10代のケビン・フィリングはミシャル・トマセン監督から大きな信頼を得た。突然、スウェーデンのトップリーグであるアルスヴェンスカンで、宿敵IFKヨーテボリとの試合に先発出場を命じられたのである。

    監督の賭けは見事に功を奏し、フィリングはデビュー戦の前半終了間際に自身の初得点にして試合をほぼ決定づける得点を決め、最終的にチームは3対0で勝利した。フィリングはベテラン選手のように巧みな動きでオフサイドラインを抜け出し、絶妙なスルーパスに反応してゴール前に飛び出した。まったく慌てることなくボールをGKの下に流し込んでネットを揺らすと、スタンドは熱狂に包まれた。試合終了間際に交代でピッチを去る際には、ストロベリー・アリーナのホームサポーターからスタンディングオベーションを受けた。

    この大胆な起用についてトマセン監督は「彼(フィリング)が先発したのは、練習の時に非常に素晴らしかったからだ。私は確信をもって彼を送り出した」と、説明した。リスクだと思わなかったのかと問われると「度胸の問題ではない。今日は最強の布陣を選んだ。16歳の選手と先週18歳になった選手がいたが、今の我々にとって最強のチームを送り出したのだ」と、答えたのだった。

    「年齢は関係ない。ケビンは質の高いプレーとエネルギーをもたらす。我々は彼に非常に感銘を受けている」。

  • 現在

    その翌日、AIKは若手きフィリングと初めてのプロ契約を結び、2028年6月までクラブに留まることを発表した。

    「AIKで初めてのプロ契約を結ぶなんて、まったく夢みたいだ」と、彼は熱く語った。「16歳でトップチームに昇格できて、夢がかなった。これからも成長し続け、次の夢であるAIKでのスウェーデン選手権優勝を目指す」。

    だが、デビュー戦で得点を記録するなどした活躍は、残念ながら即座の大躍進にはつながらなかった。膝の負傷が発覚したのである。そのせいで2カ月の離脱を余儀なくされたが、復帰後は徐々に試合に出るようになっている。8月下旬以降の8試合で先発したのは1試合だけだが、彼の年齢で出場機会を得られたことに彼自身も満足しているだろう。

    さらにフィリングはAIKでのプロ2点目となる得点を、またもや熱狂的な瞬間に決めた。ストックホルムのライバルであるIFブロマポイカルナとの試合で96分にヘディングで決勝点を叩き込んだのだ。「最高だ。これこそ、サッカーのあるべき姿だ」と、試合後フィリングは、HBO Maxのインタビューに両腕を広げて熱意あふれる様子で語った。「チャンスが来て、ゴールを決める。それで十分だ」。

    国際舞台では、フィリングはすでにスウェーデンのU18代表に選ばれており、最近では親善試合でウェールズ相手に2得点を挙げた。すでにU15、U16、U17の代表を経験しており、近い将来にフル代表デビューを果たすのは間違いないだろう。

  • ENJOYED THIS STORY?

    Add GOAL.com as a preferred source on Google to see more of our reporting

  • Kevin Filling AIK 2025Getty

    最大の強み

    フィリングの2つの先制点を見れば、彼がこの若さですでに素晴らしい才能を披露していることがわかる。ヨーテボリ戦での最初の得点ではスピードと勇敢な姿勢を見せた。相手守備陣を振り切り、GKと1対1の状況でも冷静さを保って、落ち着いて決めた得点だった。2点目は空中戦での能力を示しており、まだまだ成長の余地はあるものの、すでに185cmという堂々たる体格を誇っている。実際、デビュー戦では数多くの競り合いに挑んでおり、フィジカルの戦いにも明らかに積極的に臨んでいた。また、左サイドでプレーしながら内側に切り込むなど、ワイドのポジションでも活躍できる多才さを発揮している。

    「ケビンは私がクラブに来て最初に注目したアカデミー選手のひとりだ。それ以来、彼は非常に順調に成長している」と、フィリングの契約発表時、AIKのスカウト・リクルート責任者のフレデリック・ヴィスール・ハンセンは語った。「彼のスピード、強さ、生まれ持ったアグレッシブな性格は、我々が目指すサッカーに完璧に合致している」。

    まだ若い今の段階でも、フィリングはトップレベルに到達するのに必要なメンタリティも備えているように見える。トマセン監督は、このストライカーがヨーテボリ戦で得点した後にこう言った。「(彼は)非常に野心的だ。前回の練習では、彼にもうやめるよう言わなければならなかった。全体練習が終わってから30分もひとりでシュート練習をしていたのだ。自分の成長に対して非常に大きな責任を感じているようで、それが彼の急速な進歩につながっている」。

  • Kevin Filling AIK 2025GOAL

    改善点

    フィリングは、活発なプレースタイルで足元でボールを保持することを好む攻撃的な選手である。時には独りよがりになってボールを奪われたり、行き止まりに突っ込んだりする傾向があるため、ボールを放すタイミングを正確に学ぶ必要があるだろう。

    プロになって早い段階でかなり深刻な負傷を負ったことも懸念材料だ。この10代選手が男子サッカーの過酷さに耐えられる準備ができているのか、あるいは段階的に慣らしていく必要があるのか、疑問が投げかけられている。復帰後の彼の扱われ方を見れば、クラブがそのことをよくわかっていることがうかがえる。

    そして、16歳という年齢を考えれば当然のことに、彼は全体的にまだ未熟で、技術面にも磨きがかかっていない。もちろん、成長と共にこれらは改善されるだろう。そのことをAIKが疑っていないことは確かだ。

  • FBL-WC-2026-EUR-QUALIFIER-SWE-SUIAFP

    イサクに似たタイプ?

    フィリングは、同郷のイサクと全く同じタイプの万能なストライカーには成長しないかもしれないが、両者の経歴やプレースタイルには比較に値する共通点があることは確かだ。AIKは、この天才的な若手が今後数年でイサクのレベルに到達することを願っている。

    特に注目すべきは、イサクもまたAIKでキャリアをスタートさせた点だ。イサクはクラブの本拠地であるストックホルムのソルナ地区で生まれ育った。少年時代の12年間をAIKで過ごし、各年代のチームを経て、わずか17歳でボルシア・ドルトムントのアカデミーに加入した。

    フィリング同様、イサクは足元にボールを保持して敵に脅威を与えることが出来、ゴール前で驚くほど冷静になれるストライカーだ。両者とも決定力に優れ、26歳のイサクもタイミングの良い走り込みと空中戦での脅威を備えている。まだ10代のフィリングは、もう数センチ背が高くなって192cmというイサクの体格に追いつくかもしれないし、ギェケレシュのような、さらに身体能力の高い選手になる可能性もある。

  • Kevin Filling AIK 2025Getty

    今後の期待

    フィリングは11月末に17歳になるが、イサクと同じ道を進んで、早々とヨーロッパの五大リーグへの移籍を果たすだろうか。現段階ではまだはっきりしたことは言えない。マンチェスター・ユナイテッドの名前が挙がっていても、それはおそらく代理人の交渉材料に過ぎない。

    8月にはスウェーデンのメディアが、プレミアリーグの強豪マンチェスター・ユナイテッドとトッテナムがともに、300万ユーロ(約5億円)と評価されるフィリングに注目していると報じた。ただし英国のEU離脱に伴う規則のため、両クラブとも彼が18歳になる2026年11月まで獲得できない。マンチェスター・UはINEOSの傘下にあるスイスのFCローザンヌに彼をレンタル移籍させる計画で、スパーズは獲得しても即座にAIKへ戻す方針だと言われている。

    その後は数週間沈黙が続いたが、10月下旬、ドイツのメディアが「ブンデスリーガが注目していることを受けて、マンチェスター・Uがフィリングと『具体的な交渉』をしている」と報じ、フィリングは早ければ1月に移籍する可能性があるとされた。しかし、この報道は即座にスウェーデンのメディアによって否定された。赤い悪魔が交渉を開始した可能性はあるものの、AIKは早期売却に消極的で、このストライカーの現在の価値を約500万ユーロ(約8億円)と見積もっているようである。その後アストン・ヴィラも関心を示したと報じられたが、スカウトを派遣してフィリングを観察しているにもかかわらず、アストン・ヴィラもマンチェスター・Uもストックホルムのクラブが提示した新たな要求額に応じる意思はないと言われている。

    では本人はこの状況をどう捉えているのだろう。「特に気にしていない」と、彼は最近語った。「詳細は知らない。今はAIKに集中しているし、私がすべてを注ぐべきはAIKに対してだ。だから、このまま続けるだけだ。(目標は)チームでの先発を勝ち取り、出場する試合やチャンスごとにベストを尽くすこと。もっと得点を取り続けたい」。

    おそらくこれは賢明な姿勢だろう。急ぐ必要は全くない。現在の軌道を維持すれば、ヨーロッパのエリートクラブが彼の成長を見守り続け、大きな移籍話が必ず訪れるはずだ。

0