ラ・リーガ注目の指揮官、セルタのクラウディオ・ヒラルデス監督(36)にとって、現代フットボールの鍵を握るのはフィジカルであるようだ。
ガリシア州出身のヒラルデス監督はレアル・マドリーの下部組織などでプレーしたものの、26歳で選手を引退。しかしその後に指導者を志して頭角を現すと、昨季途中にセルタBからトップチームの監督に昇格を果たし、同チームをラ・リーガ1部残留に導いた。そして今季、自身の信条とする攻撃的フットボールで、ラ・リーガに新鮮な風を巻き起こしている。
自チームのエースであり、ガリシア選抜の元チームメートだったFWイアゴ・アスパスより1歳若いラ・リーガ最年少指揮官のヒラルデスは、スペイン『エル・ムンド』とのインタビューで、自身の過去や現代フットボールについて語った。まず、13歳で親元を離れて加入したマドリー下部組織での日々について、次のように振り返っている。
「13歳からメンタルの一部は常にプレッシャーにさらされていた。マドリーで毎シーズン、自身の価値を証明することはとても難しい。新しい選手たちが常に加わり、そのプレッシャーを克服しながらフットボールを楽しまなくてはいけないんだ」
「今の選手たちに伝えるようにしているのは、私みたいな間抜けにならないことだ。自分は練習が終われば、すぐ寮に帰っていた。だが現代の選手たちはフィジカルの重要性を理解して、しっかりと努力をしている。違いを生み出すのは、フィジカルとメンタルの1%の差なんだよ」
「私の場合は自分の才能だけで、自分の左足と戦術理解力だけで何とかしようとし、ほかの選手たちの方がフィジカル的に優れていた。そのことに気づいたときには、もう選手としての扉は閉められようとしていたね。だが、あの過程があったからこそ今の自分があるのだと思っている」
ヒラルデス監督はレアル・マドリー退団後、ポンテべドラ、オウレンセ、コルショなど下部リーグのチームでプレー。マドリーはBチームの選手も高級車に乗れるほどの高給取りであるだけに、その落差は凄まじかったようだ。
「すべてのレベルがマドリーと違っていた。ユニフォームの用意もそれの洗濯も給料も……。だが低レベルの選手たちとプレーするかと思ったら、それはまったく逆だった。私はその現実を受け入れる必要があったんだ」
「18歳で、これまでの給料額が今後のキャリアで二度と繰り返されないことを知り、ようやく地に足をつけた……。私は自分のこの経験を選手たちに伝えるようにしているよ。彼らが間違いを犯すのは仕方のないことでもある。フットボールには金がついて回るんだからね。おそらく、私の教訓や役に立っているはずだ」
セルタは19日のラ・リーガ第10節で、本拠地バライドスにレアル・マドリーを迎える。ヒラルデス監督は、古巣マドリーのことも絡めながら、現代フットボールについて語った。
「選手時代の私は、選手個人として完璧ではなかった。そして今の選手たちは、すべてを満たしていなくてはならない。フィジカル的に欠けていても、ゲームを理解できていなくてもダメなんだ。ここ数年のスペインの素晴らしいところは、フィジカル的な進化を果たしたことだと思っている。私たちはほかと比べて体が強い方ではないが、しかしデュエルなどで勝利できるようになった」
「試合のチケットは、才能やゴールを見るために買われている。イアゴ(・アスパス)が即興で行うプレーなどにね……。ただ、そうした才能は自然に生まれるもので、私たちがすべてをコントロールできるわけではない。それはストリートや遺伝子から生まれるものであり……芸術なんだよ。そうしたものを現代フットボールから見る必要はない」
「現代フットボールで進化したのはフィジカル的なことだ。例えばマドリーは、フィジカル的にとても優れた選手たちを獲得しているだろう」
「マドリーの選手たちはそれだけでなく、戦術的にも技術的にも洗練されており、どのような方法でも試合に勝つことができる。ただ、様々な手段を持っている中で一つ、皆が評価していない部分があると思う。それはマドリーと彼らの選手たちのメンタリティーだ。彼らは勝利だけを望み、そのほかの結果には目もくれないんだ。だから私たちもメンタル的に強くならなければいけないし、それと同時にフィジカル、技術と、すべてを充実させていかなければならないんだ」