22日のチャンピオンズリーグ(CL)・リーグフェーズ第3節、レアル・マドリーは本拠地サンティアゴ・ベルナベウでのボルシア・ドルトムント戦を5-2で制した。
昨季CL決勝の相手ドルトムントと143日ぶりに対戦するマドリー。アンチェロッティ監督は前試合セルタ戦で試した3-4-2-1から再びシステムを変更した。今季ノーゴールが続くベリンガムについて「アタッカーの密度が濃い左ではなく右ならば飛び出せるかも」と話した通り、左から右インサイドハーフにポジションを移している。全スタメンはGKクルトワ、DFルーカス・バスケス、ミリトン、リュディガー、メンディ、MFベリンガム、バルベルデ、モドリッチ、FWロドリゴ、エンバペ、ヴィニシウスで、スタメンは4-3-3。
前半、新たな試みを行うマドリーは機能不全が続く。左サイドのエンバペ&ヴィニシウスはまだ噛み合っておらず、右サイドのベリンガム&ロドリゴの新コンビのプレーもまだ手探り状態。加えて守備時、アンチェロッティ監督が昨季の強さを取り戻さなくてはならないといったミドルゾーンでのプレッシングも脆弱で、彼ら最強の武器であるショートカウンターも発動はしなかった。
停滞する雰囲気が漂うベルナベウで、ドルトムントのゴールが決まるのは必然だったのかもしれない。しかも、2発も。まず30分、ペナルティーエリア手前でボールを奪ったルーカス・バスケスがそれをすぐ失い、ギラシのスルーパスからマレンが先制点。さらに34分には、サイドを突破したマレンのグラウンダーのクロスから、ミリトン&L・バスケスの間を抜け出したギッテンスがシュートを決め切っている。
焦るマドリーは36分、ロドリゴの放ったシュートがクロスバーに当たり、こぼれ球を拾ったベリンガムのシュートまでもバーに直撃。結局、1点も返せないまま前半終了のホイッスルを迎え、ロッカールームに向かう選手たちにベルナベウは決して少なくない数の指笛を吹いていた。
後半、アンチェロッティ監督はさらにシステムを変更し、守備時4-4-2で、サイドを守るベリンガムを攻撃時にトップ下に据える形で猛攻を仕掛ける。対してドルトムントは4バックから5バックに移行して守備にプライオリティーを置いた。ヌリ・シャヒン監督のこの守備的采配は、結果的として裏目に出ることになる。 マドリーは後方に引くドルトムントを攻め立ると、60分過ぎに立て続けに2ゴールを奪った。まず60分、CKの流れからエンバペがクロスを放ち、リュディガーがヘディングシュートでネットを揺らす。そして62分には、モドリッチのエンバペを狙ったスルーパスをシュロッターベックにカットされると、このこぼれ球をヴィニシウスが押し込んでスコアをタイに戻した。
アンチェロッティ監督は71分に1枚目の交代カードを切り、モドリッチを下げてカマヴィンガを投入。その後も左サイドのヴィニシウスを中心として畳み掛けるように攻勢を仕掛けると、83分についにスコアをひっくり返した。ロドリゴのパスからペナルティーエリア内右に侵入したL・バスケスが、角度のないところから右足のシュートを突き刺している。
「アシ・ガナ・エル・マドリー(マドリーはこう勝つ)」のチャントが響き渡るベルナベウ。勢いに乗るマドリーは、この男がさらに2点を記録。バロンドール候補本命のヴィニシウスだ! 背番号7はまず84分、ベリンガムが自陣深い位置でカットしたボールを拾い、そのままドリブルで80メートルを駆け抜けて相手のペナルティーエリア手前まで運ぶと、冷静な右足のミドルシュートを突き刺した。そして93分にも、そのゴラッソ(ファインゴール)に勝るとも劣らぬゴラッソを記録。アタッキングサードで、“ぬるぬる”とでも形容できるようなドリブルで1人、2人とかわしてペナルティーエリア内左に入り込み、3人目は鋭い切り返しと加速力で抜き去って、左足のシュートをニアサイドに決め切っている。
前方にスペースがあり、相手が疲れていればもう誰もヴィニシウスを止められない。ベルナベウは今度は、かつてクリステイアーノ・ロナウドやモドリッチに向けてそう叫んだように、「ヴィニシウス、バロン・デ・オロ(バロンドール)! バロン・デ・オーロ!」のチャントを響かせた。マドリーは終わってみれば3点差でドルトムントを下し、CLリーグフェーズの成績を2勝1敗としている。